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そんな,ゲイ・ヒーローのことを扱ってくれるなんて!

勉強

祖国独立にドイツの力を借りようとして反逆罪で処刑されたアイルランドの独立運動家,Roger Casement(1864-1916)*1に関する研究会に出席した。
略歴を紹介してみる。ケイスメントはもとイギリス帝国の外交官であり,アフリカで活躍した。特にコンゴ領事時代,ベルギー国王レオポルド2世による原住民への残虐行為を告発した人道主義者としての一面が有名である。その後ケイスメントは職を辞し,アイルランド独立運動に関わるようになる。決定的だったのは第一次大戦中,敵国ドイツに密使(?)として渡り,イギリス人捕虜の中のアイルランド人を「アイルランド旅団」として組織し,ともにイギリスと戦おうと提案するものの相手にされず,同志2人とともに計画を実行しようとするがイギリス側に露見し,逮捕されてしまう。審議の最中にケイスメントの日記,通称Black Diaryが見つかり,そこにホモセクシュアルの記録が克明に描かれていたことが決定的になった。反逆罪のみならずモラルの面でも犯罪行為をしたということで,当時として屈辱的な絞首刑に処されることに。処刑後もその日記の真贋論争は続いていたが,最近筆跡鑑定によって本物と立証された(ただしまだ信じていない人もいる)。ケイスメントはアイルランドの殉教者として,のちの独立運動を鼓舞するヒーロー的存在となった。こうしたケイスメントの経歴からは,イギリス帝国の「建設者」であり「破壊者」でもあるケイスメントの二面性が見える。またケイスメントと同性愛イメージとは切っても切り離せないものであり,それがケイスメントの存在をより一層印象的に(?)していると言って過言ではない。はい略歴終わり。
今日は歴史・文学合同研究会と銘打たれており,歴史の方ではケイスメントらアイルランド人が帝国建設に果たした役割という面からの大まかな背景説明,文学ではケイスメントの裁判での発言や,ケイスメントを主題に扱ったイェイツの詩から見えるケイスメント像,という趣旨の発表だった。私の関心はほとんど歴史寄りなので,今日も自分の興味にひきつけて,DNBにはケイスメントの存在に関し,同性愛者としてのアイデンティティよりもアングロアイリッシュとしてのアイデンティティを重視すべきという記述があり,確かにそういう風に考えればケイスメントのイギリス帝国に対するアンビヴァレントな態度や,イェイツのケイスメントに対するシンパシーにも説明がつくのではないかと考えられるがどうか,という質問をしてみた。ケイスメントは典型的アングロアイリッシュとはいえないのではないかという答えが印象的だった。うん,確かに言われてみればそうかも。洗脳されやすい私が洗脳されただけかもしれないが。
ケイスメントは前述し続けている通りゲイなので,今日の話題もそちらに流れがち(?)であった。タイトルは,今日の文学の方の報告者の先生(ものすごく若くて可愛らしい先生だった)が,ケイスメントを扱いたいと言ったとき,イギリスで指導教官(ゲイかつアイリッシュ)に言われた一言であるらしい。ゲイというセクシュアリティについて自分で葛藤しつつ生きている人が多い中で,自分の性的嗜好に関してなんら疑問を持たず,それをあっけらかんと公然の秘密にしていたケイスメントは,ゲイのヒーロー的存在でもあるのだとか。へぇぇ。思わず,この前ゲイ(と公言してはばからない)の友人に見せてもらったゲイの出会い系サイトの名前が「ゲイラッシュ」だったのを思い出した。
今日の研究会は面白かったし,私自身にとってもなかなか有意義だった。興奮していたようで(ゲイ云々にではなく),帰宅してからは(アイルランド語の予習をやらなければならないのを放っておいて)この前まほこ様にいただいた,おばあ様お手製のりんごジャムを使ってアップルパイを作ったり(写真),バラード2番を初見で全部弾いてみたりした。半音階あああ。悶絶。presto con fuocoだなんて,久しく見ていなかった最も好きな指示を見た時には,うれしくて涙が出そうになった。
ところで,バラード3番から始めて次はバラード2番と言うと,みんな「なんで1番とか4番やらないの?」とか,「好きなの弾けばいいじゃん」と言う。どうもみんな1番や4番が好きすぎて,世の人はみんな1番や4番が好きだと勝手に決めちゃあいませんか。私は2番が一番好きよ。その次は3番ですよ。

*1:Thanks to リーダーズ英和辞典