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独立宣言アイブロー

余暇

母と,岡山高島屋にルナソルのアイシャドーを見に行った。カウンターの美容部員に傅かれているポニーテールのおっちゃんがおり,いろいろと他の人に話しかけたりしているのを後目に,今回の新色はイマイチだなどと思いながら,まぁでもせっかく来たのだし,寒色系を2つほど試してみようかと美容部員の1人に声をかけ,付けてきたアイシャドーを落としてもらっていると,件のおっちゃんが「どれを試すんですか」と美容部員に声をかけた。「『白木蓮』と『藤』です」と彼女が答えると,「私やりましょうか」とおっちゃん。その際の美容部員の狼狽えようたるや,凄かった。「い,いいんですか,先生!本当にいいんですか!」「ええ,いいですよ」「本当ですか!じゃあ,お願いしますっ!(私の方を向いて)本当に良い時にいらっしゃいましたね,ルナソルのトップにいらっしゃる先生なんですよ!1年に1回くらいいらっしゃるんです!」「……そうですか,じゃあぜひ」どうやらこの,ポニーテールのドン小西風のおっちゃんは,トップの位置でルナソルの商品開発に携わっている,高位のメイクアップ・アーティストの「先生」でいらっしゃるらしい。ルナソル・ヒエラルキーにおける第一身分,もしくはルナソル・カーストにおけるバラモンとでも呼べるだろうか。そして今日は折良く,その先生が来店される日であって,私たちがルナソルのカウンターに赴いたのはちょうどその先生の手が空いている時であって,しかも先生が私たちを見つけて,という偶然の幸運が重なって非常にラッキーだった,ということはわかったのだが,なにぶん美容部員のあの狼狽えっぷりを聞いて,私自身怖じ気づいてしまった。そ,そんな人にやってもらうほど気合いは入っていませんし,別にいいですけど私……
と,非常に気乗りのしないままその先生の手に私の顔を委ねたのだが,このドン小西先生,さすがにプロというだけあり,言うこと言うこと非常に的確なのである。私が頼んだのはアイシャドーの試し塗りだったのだが,前髪をピンで留めた瞬間,眉毛から切ると言い始めた。私の眉毛は眉頭が寄り気味であり,そのせいで実物より鼻筋が通っていないように見えていることを指摘された上,左眉毛の跳ね上がりっぷりに関しては,「こっちの眉毛,『私はひとりでも生きていけるわよ』っていう気概が見えてるね,もう眉毛だけ独立宣言しちゃってる感じ」というコメントをいただいた。眉毛カットまでしてもらい,眉毛を描いてもらったのだが,それだけでもう,美人になった気がした。それほどセルフ眉毛とは全く違ったのである。恐るべし眉毛。アイシャドーに関しても,「白木蓮」カラーと「藤」カラーとを片目ずつ塗ってもらったのだが,さっさと「こっち(白木蓮)の方がいいね,こっちにしよう」と決めてくれた。世の美容部員さんたちにもの申したい。これくらいはっきり決めてもらわないと困るのである。自分ではどっちがいいかわからないので客観的な視点を求めているのに,「まぁ,こっちも綺麗ですけどねー」とか言われていたのでは,いつまで経っても決められない。売り子たるもの,客の自主性なんかにいつまでも任せていてはいけない(と,個人的には思う)。
眉毛とアイメイクをプロの手に委ねるだけで,私はこの数ヶ月間で最も美しかったであろう,そう言っても過言ではない,まったく過言ではない(ご批判など受け付けません)。アイシャドーもそうだけれども,何より眉毛に関する驚きが本当に革命的であったので,アイシャドーに加えてアイブローセット(ペンシルとパウダー)も購入した。さらにドン小西先生は私の髪型に関して「サイドをこんなにぺったり顔の横に持ってくるのは似合わないと思う」と,9ヶ月越しの前下がりボブをあっさり否定なさり,横髪は流した方がよいと横髪を持ち上げて見せた。そうすると顔に奥行きが生まれるから,と。これまた的確であった。決して洗脳されているわけではなくて。
この先生,聞くと錦糸町でサロンを経営している(?)方だと言う。東京に住んでいるのだと話すと,今度うちのサロンにいらっしゃい,髪も切ってあげますよと言われ,名刺をいただいた。ええ,錦糸町の美容師さんがなぜルナソルのトップにいるのかは謎である。しかしながらここまで全て的確なアドバイスをいただいたことはなく,私もその先生をすっかり信頼する気になってしまった。だって私が何も言っていないのに,「彼女(=私)は学生さんなのか社会人なのかわからない雰囲気があるね,どことなく学生さんの楽しげなモラトリアムの雰囲気もあるし,でもいつまでも遊んでいられないって雰囲気もあるし」と,私の大学院修士課程という微妙なポジショニングまで完璧に言い当てたのである。これはもう,東京に帰ったらさっそく錦糸町に足をのばしてみようと思う。何はともあれ,リクルート実力主義です。