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IBHS2009

学校

今年もIBHS(International Bibliography of Historical Sciences)の作業をする季節がやってきた。これは簡単に言えば,歴史学関係で出された日本の優良文献の書誌情報を英訳するという作業で,毎年うちのゼミ生が請け負っている。
今日は学校で説明を聞いて,分担。じゃんけんに弱い私が1番に勝ちぬけるという奇跡が起こったので,それでは去年やって慣れている日本近世史を,と選んで帰ってきた。締め切り自体は来週なのだが,要員の中でも私は唯一修論を控えた身であり,放っておくと1週間かけてダラダラこの作業にかかってしまうかもしれないとの懸念から,受け取ったその日にさっさと終わらせてしまうことにした。なかなかどうして今年のものも手ごわいものばかりである。

禁裏・公家文庫研究〈第3輯〉

禁裏・公家文庫研究〈第3輯〉

トップバッターからこれ。「禁裏」どうやって訳しましょう。禁裏というのは言うまでもなく内裏であり宮中であるが,建物と同時に宮廷社会そのものも示したはずで,単にimperial palaceと訳したのでは違う気がする。おまけにインペリアル・パレスだなんて,なんだかバッキンガム宮殿のようで落ち着かない。
遊女の社会史

遊女の社会史

「遊女」をprostituteだのwhoreだのと訳しては,遊女や花魁にすこぶる失礼な気がするのだが,それ以外に訳しようがない。要は高級娼婦でしょう。しかしながら「高級娼婦」という意味の英語はないのね。「コールガール」もまた違う気がするし(だって来るのは男の方だし)。
あと「公娼」が意外にやりづらい。一応字義どおりにofficial prostitutionと訳してみたが,要は「認可された売春行為/売春婦」ということだから,registered prostitutionの方がいいだろうか。
[rakuten:book:12051494:detail]
「非人」,とりあえずthe lowest class peopleと訳したのだが,なんかそれだと単にイギリスのイーストエンドのスラムの人たちみたいで,社会的差別を受けていたニュアンスが表出されない。個人的にはイギリスかぶれの性で,the lowest class peopleなんて言うとディケンズしか頭に浮かばず,そうなるとイメージ的に「貧しいながらも力強くたくましく生きていた人々」になってしまう。もっと悲哀のある言葉が欲しいのだが。
近世の遊行聖と木食観正

近世の遊行聖と木食観正

ついに来たな,かなりの強敵。「遊行聖」さてどうやって訳すか。苦肉の策でmissioning priestsと訳してみたが,まったくもって納得していない。遊行は要するに布教活動だからこれを英語にするとしたらミッション以外にあり得ないのだが,ミッションがそもそもキリスト教の言葉である。おまけに「聖」も要は「上人」なのだが,英語ではpriestとしか訳せない気がする。ついにあれ?bonze?なぜ,なぜ先生はこんなサブタイトルをお付けになったのか。御不審を蒙ること,身に覚えなし……苦心の果てにこう訳したTanuma Okitsugu: I have no idea why I’m looked up with suspicion.(『田沼意次 なぜ疑われているのかわかりません』)。
おかげで今年も大変楽しいです。はい。