読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Material Girlの書く反マテリアリズム

勉強

あらゆる復興運動と同様,アイルランド語復興運動においても,まずその理論の根幹は「失われた旧き良きものを取り戻す」という点にあった。そしてその仮想敵として,物質主義・拝金主義(をもたらすイングランド),およびそれを無批判に受け入れるイングランドかぶれのアイルランド人,「西ブリテン主義者(West Britons)」が槍玉に挙げられたのである。
例えば(中略)GJに引用されている,1882年11月18日刊の『ジャージー・オブザーバー』紙のGJ評の一節は,その考えを雄弁に語るものである。

多くの旧き良き建築物が,この実際的で,商業志向で,拝金的な今日において,物質的・商業的な緊急性の前に壊されてしまうとき,……線路や安酒場のために場所を空けなければならないとき,私たちは嘆息せざるを得ない。……しかしすべての喪失の中でも,言語の喪失はもっとも取り返しがつかないことである。

この引用からは,言語も建築物と同じく,物質主義・商業主義・拝金主義の前に屈しようとしているという危惧の念が読み取れる。言語を建築物などの財産と同一視する論旨は,当然その貴重性を強調しようとする意図のものであるが,期せずして現在は使われることのない「遺構」としての面も暴露していることになる。

これはちらっと書いてみた第一稿の一節だが,(みなさまご存知の通り)これを書いている私自身が結構なMaterial Girlであるもので,理解はできるのだがそれより先に進めない,という状況にある。
尚古趣味とかリヴァイヴァリズムとか,そういうものに興味を持ったのは3年生の時に受けた草光俊雄先生のゴシック・リヴァイヴァルの授業がきっかけだったように記憶しているのだが,私がずっとその時から興味を持っているのはその「担い手」の問題である。ゴシック・リヴァイヴァルもゲーリック・リヴァイヴァルも,それを起こしたのは,むしろその仮想敵たる状況を引き起こした人間たちの一員とでも言うべき存在なのである。ゲーリック・リヴァイヴァルに関して言えば,支配者層たるアングロアイリッシュの,しかも地主層の知識人(階級は時代によって違うが)がそれを伝統的に担ってきたという重要な点があって,えっ,ちょっと待ってよ,アイルランド語復興させるべしって,アイルランド語を駆逐したのはそもそもがあなた方の祖先じゃないか,という話なのである。この辺を掘り下げれば不安定なアイデンティティを持つアングロアイリッシュがどんな「アイルランド像」を理想としていたのかが明らかになるんじゃなかろうかしら,というのが私の問いというか,まぁそんなところである。
ちなみに,この問題に気づいたそもそものきっかけとして,都会人が無神経にも田舎育ちの私のような人間の前で「本当にいいよね,田舎って」とか「都会なんてつまらないよ」などと言うことに対する疑問,というよりむしろ憎悪(!)があったわけである。なにが田舎っていいよねだ,田舎がどんなところかは18年間暮らしてから言え!といつも思っていたもので。アイルランド語に関しても同じようなことが言えて,英語を話す地主様たちが「アイルランド語っていいよね,みんなもっと話せばいいのに」とかのんきに言っているのを,きっと当のアイルランド語話者たちは,八つ裂きにしてもなお飽き足りぬと言わんばかりの顔で眺めていたに違いないのである。アイルランド語が話せたらいいのに,だぁ?アイルランド語しか話せないために仕事にも就けないは,裁判では不利になるは,移民先でも笑われるは,そういうことを知ってから言っとんのかあんたらは!とさぞや(英語で)言いたかったであろう。そういう田舎ルサンチマンみたいなものが,今回の論文のメンタリティの根底にあるかもしれない。上に引用した反マテリアリズムに関しても同じである。マテリアリズムはよくない,とか言っている張本人はマテリアリズムの権化のような存在なのである。そのへんもうちょっと皮肉りたいのだが,そんなことをしたら論文としての体裁を欠いてしまうかもしれない上,情念みたいなものが滲み出てきたら怖いのでやめておく。

「だって私たちは俗っぽい世の中に住んでいるのよ,で,私は俗っぽい女の子」そうその通り。そもそもマテリアリズムがどれほどダメだと言っても,マテリアリズムの恩恵を受けずにこのご時世生きているわけないんだし,だったらもうこれくらい開き直ってしまえばいいじゃないか。しかしああ,マドンナのベスト欲しい(マテリアルな欲望)。

この新曲も気に入ったのでダウンロードして聞いていたら,やたらI don't know what you're waiting for(何をぐずぐずしているの?)とか,No more hesitationとかいう歌詞が耳に付いた。はいっ!

おまけ,マドンナの愛娘。ママのヒットソングのPVの再現。Like a Virginのウェディングドレスの娘による再現と,最後の投げキスに,お姉さんはやられました。か,かわいい〜。