読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ここには,医師はおりません

勉強

今日は修論の本筋からは少しずれるけれども,一応勉強のお話。
自分が研究していることが,思いがけず人の研究とリンクして,予想もしなかった裾野が広がるのを見るのは,本当に無上の喜びだなぁという,なんだかいっぱしの研究者っぽいことを今日思ったのでした。
というのも,ふとしたことでid:saebouさんにメールをお送りした時,アイルランドシェイクスピア受容みたいなお話になって,そういえば私が研究しているものだと,反英のニュアンスを消すためなのか何なのだか,復興論者たちはしきりに「シェイクスピア,ミルトン,ニュートンを輩出したイングランドはすばらしい」「英文学最高」みたいなことを言ってます,ということをふと書いたのだが,他には何かあるんだろうかと思ってふと一次史料に"Shakespeare"で検索をかけてみると(私はPDFの一次史料を使っています),出るわ出るわ。今まで気づかなかったのだが,連載もののオシーン伝承の研究について,しきりに「マクベスでは」とか「リチャード3世では」とか,シェイクスピア悲劇が引用されている。どうも悲劇としてオシーンを解釈するにあたって議論が展開されたようなのだが,それにしてもアイルランドフォークロア研究に英文学の金字塔を引用するというのは,これはやっぱり,ちょっと私の主張を裏付けてくれるもんなのでは,と興奮もひとしおであった。ほらねやっぱり,現役生は最後まで何とやら!saebouさん,きっかけをくださって本当にありがとうございます。
学際的研究がどうやらとか,そんなことが言われるようになったのはもうずっと前で,今も何かと言えば絶対善として学際性が持ちだされるが,やはり象牙の塔とはよく言ったもので,ともすれば自分の研究にあたってはその領域の研究しか読まないし知らないしで,知らず知らず狭い枠内に沈殿する。しかしながら今日の私のように,異分野交流によって新たな展望がいきなり拓ける経験をしたりなんかすれば,ある種マントラのようになっているその「学際性」というものがどのようにありがたいものか実感されるというものである,ということがよくよくわかった。プラス,私の研究対象が学際的研究には最も適したもののひとつでありながら,あまりその成果がなかった理由も。ああ,駒場にも顔を出しておいてよかった。門外漢ながら文学と何らかの形で接点を持っておいたことがいかに貴重な体験であったか,身にしみてわかりました。特に,歴史をやっているのだからなおのこと。何か研究対象を決めたら,せめてその時代の文学と音楽はかじっておきたいというのが私の持論なのだが,音楽はもうラヴェルシャブリエショパンフォーレと3年次から今にいたるまでかじりっぱなしだし,文学の方は(今はお休みしているけれども)イェイツ読書会でドンピシャなところをやっている。本当に贅沢なことです。せめてこの機会を無駄にしないよう,精一杯がんばりたいと思います。
タイトルは象牙の塔ならぬ『白い巨塔』の,佐枝子さんの名台詞である(今日の再放送で出てきた)。オンタイムでやっていた時,私の家庭教師(医学部)が「あれと『ブラックジャックによろしく』で大学病院のイメージが悪くなるからやめてほしい,でも面白い」と言っていたのを懐かしく思い出すのだが,なるほど,確かに私の親など,研究者の世界というものはああいうものだと本気で思っている節がある。医学部の教授人事がどういうものか知らないが,少なくとも大学の教授というのは,確かに里見先生のような純粋な理想だけで務まるもんでもないだろうが(いや,でも大河内先生は務まっている),かといって財前先生みたいに金とコネだけで(まぁ技術もあるけど)なんとかなるほど甘くもないだろうと思うのだが。しかも「国立浪速大学」って,「国立」付けんでしょう,いちいち(用例:「五郎君は苦学生でしてな,奨学金もろて国立浪速大学に進学しましてん」by 財前又一)。「国立大学法人東京大学」って言わないのと同じで。
ちなみに財前先生は岡山は和気のご出身だということです。必要以上に岡山がデフォルメされて超田舎に描かれている*1のはまぁご愛嬌として,財前先生は「身の丈に合った地位を」みたいなことを実母きぬさんに言われていましたが,少なくとも私の知る限りでは,岡山の人はこんなこと言いません。「身の丈」どころか,思いっきり背伸びをしてつかめるだけのものをかっさらえ,それでも手が届かないなら踏み台でもなんでも持ってこい,くらいのことは当たり前に言われます。その意味で財前先生は,典型的な岡山の県民性みたいなものを体現しているとも考えられます。中途半端に地方の人間が大都会で成りあがることを夢見る,要はジュリアン・ソレルである。かく言う私も同じなのだが。「理想は高い志に宿るが,野心は矮小な魂に宿る」みたいなことを東先生が言ってました。気をつけます。もっとも,某先生の胃癌と同じで,もう手遅れかもしれないけれども*2。ちなみに私がシリーズ中で一番好きなシーンは,関口弁護士がカルテの修正液の跡を見つけて透かして写真を撮るところです。

*1:黒電話使っていたり,庭先に鶏がいたり。

*2:もしかして再放送から初めてご覧になった方もいらっしゃるかもしれないので,一応隠します。