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でも涙が出ちゃう 女の子だもん

健康

少なくとも私の信条は,家族の前と恋人の前で以外,女は人前で泣いちゃいかんというものです*1。しかしそれ以外のところでは,決して泣くもんではないと思います。女は男を泣かすということに対して躊躇は特にないが(罪悪感もおそらくないが),男の人はとかく,女の子を泣かせるということを恐れているからです。自分の前でも一度泣いた女の子に対しては,その後の扱いにおいて著しく「手心」が加わります。そしてそれこそが,私が最も恐れていることです。いかなる場面にせよ手心が加わった時点で,まともに相手にされてないじゃないですか。だったら泣かせるくらいのことを言われてでも,まともに相手にされた方が断然いいと思うのですよ。そもそも男性も,女を泣かせることについてそんなに罪悪感を持たなくていいと思うのですけども。泣く人はすぐ泣くし。
閑話休題,なぜこんなことを言ったかと言いますと,泣いたからです。いえいえ人前でではないですよ。家で泣いたんですが。いえいえ誰にも振られたわけではないですよ。いえいえ修論……は,常に泣きそうなので,むしろ泣きません。泣いたのは,痛かったからです。親知らずの抜歯の傷が。
とは言え手術がまずかったわけでは当然ない。それどころか手術はまったく見事なもので,思わずタンホイザーの序曲が脳裏をよぎるくらいでした(しかし財前先生は,なぜいつもバカのひとつ覚えみたいにあればっかり歌っているのかとは思うが。他にもあるでしょう,色々)。何に驚いたって,麻酔の時に痛みを全く感じなかったこと。表面麻酔すらされた覚えがない。消毒しますねと言われてささっとガーゼで歯肉を拭きとられた後,いきなりあの恐ろしい注射器が目の前に出てきた時には頭が真っ白になり,そして激痛を覚悟したのだが,まったく痛くなかった。どんなトリックが?それともその「消毒」が実は表面麻酔だったとか?そんなことありうるんですかね?
そして次に驚いたことには,すべて私に公開する形で施術が行われた。もちろん口の中は見えないが,大学病院で使われる,配慮の結果だと思うが逆にいたずらに恐怖心をあおっている気がする,例の口の部分だけ穴のあいた布を顔にかぶせられることはなかった。しかし巧みに用具そのものは私の目の前にあまり持ちだされず,配慮に感動した。今回はペンチみたいな道具を使われていなかった気がするのだが,気のせいだろうか。そして担当の女医さんはクールな外見の方なのだが,抜けた時に「あっ☆ 抜けました!」とおっしゃったのが可愛かった。そうですか,抜けましたか☆
そんな感じで手術は滞りなく進み,若干の違和感を除いては何事もなく意気揚々と帰宅したのだが,麻酔が切れてきたなと思ったのも束の間,ものすごい痛みが始まった。どんな風に痛いかと言いますと,ちょっと口を動かしただけで傷口から深く差し込むような鋭い痛み。当然物を飲んだりすることもできなくなり,それどころか唾も飲み込めなくなって,今までに親知らずを2回抜いたけれども経験したことのない劇症に驚いた私は,慌てて電話をかけてかくかくしかじかと説明したのである。しかし当然ながら「もう少し様子を見て,それでも続くようならまたご連絡を」であった。思えば「麻酔が切れてきたな」と思ってから痛み止めを飲んだのが悪かった。帰ってすぐにでも飲んでおけばよかった。もうそれから30分か1時間か,とにかく永遠にも感じられる時間ひたすら激痛に耐えましたよ私は。しかし唾が飲み込めないのには閉口した。仕方ないので洗面所に駆け込むのだが,その都度もう,『風立ちぬ』な気分になった。そうこうしているうち,疲れてベッドに倒れ込んでいたようで,起きてみると,うたた寝の常としてつきまとうよだれにも血が多く混じっていた。もしうたた寝中の私を見た人がいれば,青酸カリでも盛られたのではと思ったことであろう。いや,それにしてはおそらく,幸福な顔をして寝ていたのだとは思うが。
気がつくと涙も出ておりまして(「泣こう」と思わずに泣いたのは久しぶりな気がする),ああ泣くほど痛いのだなと改めて感じられてしまい,痛みというよりもげんなりしてしまって,もうこんな状態で何もできようはずはないから,とめどなく泣きながら改めて少し休もうとようやく思えたのでした。そのうち痛み止めは無事に効いてきて,今にいたる。おかげさまで,とりあえずは頗る順調です。
しかし怖いのは明日の朝。抜いてすぐの間は痛み止めを数時間おきに服用して痛みが出るのを防ぐのだが,なんせ寝ている間は服用できないので,前回抜いた時はもう,毎朝痛みで目が覚めたりしていました。今回も結構そんな予感がする。ああ。正宗くーん(あのドラマを見るたびにコハルちゃんになりたいと思うのだが,もうこの際,八名信夫でもバナナマン日村でもいいです)。

*1:家族の前でというのは,長らく生活を共にする以上,おそらく泣かないことは至難の業でしょうし,恋人の前でというのは,泣くことが意思疎通の手段にもなりうる上,問題解決への最短距離になることが往々にしてあるからです(外交手段としての涙)。