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ショパン生誕200周年

ピアノ

今日はショパンの生誕200周年です。泣く子も黙る,ショパンです。日本人が愛してやまないショパンです。私も硬派ぶっていた時代がありまして,「ショパンなんてチャラい音楽だぜ」とか「あんなの女子どもの弾くもんだぜ,フッ」とか言ってバカにしていたものですが,悔しいことにやっぱりショパンの曲では感動せざるを得ません。こっ,これは,涙じゃないもん……!
さて,ショパン200周年特集にかこつけてこんなことを書いているのは,もちろん私だけではございません。今日は各方面でショパン200周年特集が組まれたようで,Yahoo!のトップページにはYahoo!知恵袋の特集として,ショパンについての質問がいくつかピックアップされていました。その中の1つを引用。

ショパン嫌い!!

いきなり題名がこれで、ショパン好きな人には申し訳なく思っています。
すみません。

僕はピアノをやっていて、好きな作曲家はプロコフィエフです。
なんていうか、あの不協和音の使い方っていうか、プロコ独特な音楽が大好きです。

僕は今高校生なんですが、僕の周りにはショパン好きがたくさんいるんですよ。
まあ別にショパンの曲を聞いてて嫌になるなんてことはないんですが、
なんと言うか、ショパンって単純というかシンプルというか、
もちろん、ショパンが難しいってことは知っているんですよ!!
でもなんかすすんで聞く気にはなれないっていうか・・・。
例えばエチュードなんですが、
あれってあくまで練習曲じゃないですか。
練習曲ってことは、本来は聞かせるためのものではなくて、
ピアノの技術を上げるための曲ですよね?
そう思いながら聞くと、やっぱりつまらないなぁって思ってしまいます。
これはエチュードに限らず、他の曲にも言えることなんですが、
ショパンの魅力って何なんでしょうか?

ショパンがこれだけ有名なわけですから、ショパンがいいことは間違いないと思うんですが、
何がいいのかなぁと思ってしまいます。

あとこんな話を聞いたことがあります。

ショパンが嫌いなのは、ショパンが弾けない初心者だからだ。

これを聞いたとき、ちょっとムカッってきました。
自分で言うのは何ですが、ピアノについてはそうとう努力してきたんで、
少なくとも初心者ではないっていうか、弾こうと思えばショパン弾けます!

人によって感性って違いますから、どれが正しいなんてことはないと思いますが、
ショパンが好き嫌いか、理由付きで教えて下さい。

この質問事項を見た時,なんということか,ちょっとカチンと来てしまいました!これは,快挙です。私はショパンに対して,上記のようなひねくれた見解を抱いていた上に,ショパンを弾くようになったら,自分が弾けないもどかしさから今度は卑屈になり(「どうせショパンなんて弾けませんよーだ」的な),したがってショパンに対しては相当複雑な気持ちを持っているのです。だから今までは,万人がショパンを愛する中で,こういう「ショパンのどこがええの?」というような一石を投じる文章を見ると,ほら見ろ,ざまーみろ的な,ちょっとほくそ笑みたくなるような気分だったのです。ついこの間,バラード3番の時代までそうでした。特にバラード3番は,バラード4曲の中でも結構好きな曲だったので,そのバラード3番を演奏会で弾いて失敗したショックはもうこの上なく大きくてですね。そういえばスケルツォの時もそうだった(スケルツォ全4曲の中で2番目に好きなスケルツォ1番を,演奏会で失敗)。しかし今,どういうわけか,ショパンを援護したくなっている……!ショパンへの愛着が生まれたのでしょうか。
でもこの質問者の男の子も,この文章を読む限り,私と同じような気持ちなんじゃないかと思うのですよね。ちょっと共感できるのですよね。面白い議論だと思うので,ちょっと論点を挙げて考察してみます。
まず,たぶん今プロコが好きだというのは,言っちゃ悪いけどおそらく過去の私と同じく,少しとんがっているのだろう。洋楽に目覚めた男子がJ-POPをけなし始めるようなもので,人と同じことが嫌なのではなかろうか?とちょっと思われます。とはいえ彼自身も書いている通り,「人によって感性って違いますから,どれが正しいなんてことはない」のだろうが,でもやっぱり,「本当に」プロコが好きな人にとっては,ショパンが好きか嫌いかなんてもう愚問以外の何者でもないと思う。ファッションでも,まずはきちんと王道な着こなしができないと「着崩す」とか「抜けを作る」とかができないのと同じで,ショパンを理解できずにプロコを理解できるなんて,やっぱり私は信じられない。
それから(まぁエチュードが云々というのは,ちょっとお門違いな論点なので飛ばして),「ショパンは単純だ」という論点について。単純だからダメだ,複雑だからいい,という点がそもそもお門違いですが,まぁ言ってみれば,キッスやエアロスミスなんて彼は嫌いなのでしょうか。あるいはJ-POPでもそうだと思うのだけれども,古今東西,名曲として残っている曲というのは,ほとんどの場合メロディは単純である。それにクラシックでも,プロコやプロコを初めとする現代の作曲家の作品はいたずらに複雑なのかというと,必ずしもそうではないですよね。彼らだってバッハやモーツァルトを勉強しているのだから。
最後にこの投稿の最大論点になるであろう「ショパンが嫌いなのは,ショパンを弾けない初心者だからだ」という命題。これは残念ながら,私は真なのではないかと思うのですよね……。まぁ全面的に正しいとは言えなくても,8割くらいは正しいと思うのですよね……。質問者の彼は「ピアノについてはそうとう努力してきたんで,少なくとも初心者ではないって言うか,弾こうと思えばショパン弾けます!」と憤慨しているようだが,もうなんていうか,自分を見ているようで悲しくも愛おしい。弾けるよね,ショパン……わかるよそれ……しかし残念ながら,「弾こうと思えば弾ける」というのは「弾ける」とは言えないのである。それにショパン,弾こうと思ったところで弾けないですよ。彼にはまず,ショパンの作品がなぜ「ピアニストの試金石」としての地位を勝ち得ているのか,という点について,ぜひともよくよく考えてもらいたい。あるいは,ショパンコンクールがなぜピアニストの登竜門なのか。彼らは何を審査されているのか。今年はショパンコンクールイヤーだし,ファイナルを見て,誰の演奏のどういうところに心を動かされ,そしてどのような順位が出ているか,できるだけ客観的に見てみるとよいのではないかと思う。ショパンの何が心を動かすのか,演奏者がショパンの曲に何を込めているのか,わかるのではなかろうか。
さて,高校生の言葉に大人げなく反論したところで,ショパンと言えば,そうです。あれです。

200周年が関係してかせずか,バラードは4曲中3曲が揃っております(1番,2番,4番)。もうこれは聞きに行くしかないですね。そしてこのプログラムに惜しくも揃わなかった3番については,後からCDやらネットやらで,ぜひともお聞きくださいませ(おっしゃっていただければ,フランソワのCDをお貸しします)。バラードの中でも叙情性の高い,すばらしい曲です。