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ひさしぶりのレッスン

ピアノ

最後のレッスンから実に2ヵ月ちょっと,ついにレッスンを再開した。今月の始め,ジャカルタからご帰国の先生に「次のレッスンいつにしましょう」とメールを送り,「4月後半の木曜日がありがたいですね。また連絡くださいね♪」との先生からのご返信に,「では22日ではいかがでしょう」と即返事をし,無理やり取り付けた感があるレッスンであった。なんとはなしに,恋が始まる前の男女すら彷彿とさせる「がっつき」感のあるメールである。恋愛でこれをやると,相手に引かれてしまう可能性が多々あるが,恋愛以外で何か必ずやり遂げたいことがある時には,このように外堀を埋める,いや外堀にコンクリートを流し入れるくらいの実行力が必要です。少なくとも私はそう思っております。
さて,なにか本番が終わったあとのレッスンの再開というのは,たいてい自力での練習に倦み,限界を感じ始めた時に入れていただくのが常である。そのお約束によって一時はやる気を回復しても,すぐまた忙しさやらにかまけて練習がなおざりになり,その結果として,当初のすばらしい目標は下方修正されることが多い。今回も,練習を始めた頃は「バラード1番と平均律の次の課題は譜読みを仕上げた状態で持っていき,なおかつ今やっている平均律は暗譜を仕上げて合格させてもらう!」という大層ご立派な目標を持って邁進していたのだが,まずバラード1番の難しさに音を上げ,まぁこれは「ぼちぼち」ということにしようと決め,次いで平均律の難しさに音を上げ,とりあえず今やっている平均律の譜読みが終わったらということにしようと決め,今回は平均律の暗譜を最大の課題にしようと思った……のだが,ついにフーガの暗譜はままならず,それどころかフーガをまともに弾くことすら危うくなっており,とりあえず今やっている平均律モーツァルトフォーレについて「リハビリさせる」というところにまで落ちぶれた。しばらくの間はショパンばっかりやっていたんだし,久しぶりだし,まぁ仕方ないか,という言い訳とともに。音大生は毎回,決められた課題を決められた期日までに仕上げて持っていかなければならないわけで,例えばレポートとかだったら徹夜もできるが,音楽だとそういうわけにもいかない。おちおち友達とご飯食べて帰ったりとか,そういうこともできませんね。まったく尊敬します。
目標を定めたらその8割方達成できれば上々なので,できるだけ高く目標を設定しておくほうがよいというのは世の常であるが,私は今回の低レベルな目標から窺い知れる通り,レッスンはリハビリに終始していた。何度か聞いた覚えのある注意がたびたび先生からなされ,ああそうだったここはそう弾くんだった,と気づいてばかりであった。特に,バッハは「弾くことに追われずに楽譜をちゃんと分析しなさい,モチーフだけでなくてその変形とか応用も」モーツァルト「(変奏曲を弾いているので)ヴァリエーションを弾く時は常にテーマを意識しなさい」と,本当に私はピアノ歴19年目かと思われるほど当たり前なことばかりの注意を受けた。なんかもうバッハに関する指摘なんて,物事の上っ面しか見えていない私の分析眼の甘さを鋭く突かれたような気さえします。こんなだから論文も叙述的だと言われるのだなぁ。今回は他にも,バッハを弾く上で色々と重要なことを再確認していただいて,反省すると同時に,その深さに改めて感動した。バッハの作品は演奏者の試金石であると同時に,人間そのものの試金石にもなるものだったりして,と思ったりした。忍野に遊びに行った時,P会の誇るヴィルトゥオーサ・みほちゃんが「まぁあの人,○○はうまかったよ。バッハは下手っぴだったけど♪」と人の演奏を評するのを聞き,inashoさん・ともちゃんと共に,その発言の後半「バッハは下手っぴ」に対して慄然とした覚えがある。バッハはきちんと弾けないと演奏者としての沽券にかかわる上,その人の先生の顔に泥を塗ることにもなりかねない。今度こそバッハはきちんと仕上げていこうと思います。
レッスンの後は,先生のインドネシアトークを聞かせていただいた。ジャカルタは日本人がひとり歩きするには多少危なく,歩くのはもちろん,タクシーを拾うのもあまりおすすめされないので,日常的なお買い物など若干不便だったとか。その上,向こうでは着いたその日から合唱などのイベント尽くしで*1,伴奏をする機会も何度かおありだったらしく,インフルエンザと百日咳にかかったとか(百日咳は帰国してからわかったのだとか)。歯の詰め物が取れるなどということもあったらしいので,やっぱり掛け捨てでも保険には入っておくに越したことはないという教訓を得た。これだけ書くと何の楽しみもなかったようだが,帰ってきてみるとまた行きたいと思うとのこと。滞在の最後,少し足を延ばしてバリにもいらっしゃったそうなのだが,ここは文句なくとても楽しそうだった。私もバリ行ってみたい!誰か一緒に行きませんか!去年の台湾の時もそうだったのだが,旅行に行った直後は旅行熱が高まっており,次はどこに行こうかとばかり考えてしまう。
ひさしぶりのピアノのレッスンに加えて異国のお話と,今日はなかなか刺激的な一日であった。次回こそは,今回のレッスンに向けて当初掲げていた目標を実現するぞー。すなわち,「バラード1番と平均律の次の課題は譜読みを仕上げた状態で持っていき,なおかつ今やっている平均律は暗譜を仕上げて合格させてもらう」。ついでにバッハについてはちゃんと分析して,モーツァルトはテーマを意識して弾く。うわー,これは我ながらハイレベルな目標設定である。でもがんばる。19年目にふさわしい実力になりませんと,そろそろ。

*1:高校生の文化祭に招かれた時,向こうでは五輪真弓の「KOKORO NO TOMO」という曲がものすごく流行っているということを知ったらしい。