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シャコンヌとバラード

ピアノ

ここ1ヵ月くらい,うちのマンションでは毎日,バッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」が聴こえてくる。あの重厚な最初の一音が夜に響くのは,なかなかどうしてドキッとする上あまり楽しい気分になるようなものではないので,バッハ弾くならもうちょっとかわゆい曲を選んでくれればいいのになぁ,と苦々しく思っていたのだが,毎日聴いているうちにだんだん楽しくなってきて,今では途中の速いパッセージのところで乗れるようにすらなってしまった。音が聴こえてこなくても,皿を洗いながらとか,シャワーを浴びながらとか口ずさんでいたりする。「シャコンヌ」を練習しているのは結構真面目な方であるようで,割と長く練習されている上,時には朝から弾いていることもあって,激しい部分を長々と練習されるのは多少閉口する時がないではないのだが,1日の練習時間が短いようだとちょっと寂しくすらなってきてしまった。今日はあまり弾いてなかったなぁ。もういつでも好きな時に「シャコンヌ」が聴けるように,さっそく音源を求めたいと思います。ちなみに,割と上手な方であると思うのだが,唯一不満なのは最初の音がたまに雑であることと,最後を短調のまま終えていることである。あ,唯「一」じゃなかった。最初の音は,あの曲は特に最初の音だけで8割方とまではいかないにしろ何割かは確実に決まってしまうのだから,いつでも適切な力加減での入り方ができるよう,最初の音だけの練習とかしてみた方がいいんじゃないかなぁ。あと,最後は好みの問題だと思うけれど,なんていうかこう,苦難に満ちながらそれでも前へ進もうと,暗雲(もしくは濃霧)の中を必死でかきわけて進んできて,最後にもう力尽きて倒れようかというところに一筋の希望の光……!みたいなドラマティックさが演出できると思うので,少なくとも私は最後長調の方が格段に好きなのです。力尽きて死んでしまうのでもいいけどさ。こればっかりはいつ聴いても思ってしまうので,以上2点について「シャコンヌを練習していらっしゃる方へ」との見出しとともに,集合ポストのところにある掲示板にでも貼っておこうかと……思うのはやまやまなのですが,大きなお世話にもほどがあるのでやめておきます。そもそも,長々と練習されるのはどうのこうのなんて,1年2ヵ月もバラード2番を,しかも一向に上達しないまま弾いてきた人間には口が裂けても言えない。
さて,シャコンヌならまぁいいとして,問題はバラードが聴こえてきてしまったことである。もちろん,1番が。こちらはまぁ譜読みしたてといった感じで,まだ弾きこなせてはいないようなのだが,それでも私よりは格段にお上手である。もうこうなってしまったら,毎日毎日,私が先に練習を始めるかあの人が先に練習を始めるかの勝負である。後から同じ曲を弾き始めるのなんて,なんか嫌がらせみたいだし。おかげで一時も気が休まらない。しかし,そんなことはまだいいのである。これから来るべき「どちらが先に上達するか」「どちらがうまいか」という段階を考えると,ほとんど気も狂わんばかりである。このマンションは基本的に音大生用のマンションなので,相手は(同じマンションに住んでいるサークルの後輩でない限り)十中八九音大生であろう。すると,どう考えてもあちらが勝ちである。勝負じゃないなんていうのは綺麗事である。もちろん「勝負」ではないにしろ,歴然たる実力の差というのは確かに存在するのである。今回もそうなってしまったらと考えると。
しかしまぁ,こうなった以上仕方がない。ここは一念発起して,「音大生と弾き比べても恥ずかしくない」レベルを目指してみましょう。おお,大きく出たな。そして最初の一音には,私も気をつけよう。「シャコンヌ」と同じくらいバラード1番も最初の一音で何割か決まってしまう曲なのだから。そして「シャコンヌ」も,いつか弾いてみたいなぁ。