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君に届け

読書

君に届け 1 (マーガレットコミックス (4061))

君に届け 1 (マーガレットコミックス (4061))

なんでこんなに漫画ライフが充実しているのかというと答えは簡単で,地元のTSUTAYAには大変豊富なレンタルコミックの蔵書があるからである。その上,連休中は7泊8日レンタル100円が半額。普段漫画なんて読まないので,こういう機会をとらえて読みまくるしかない。大変評判のいい『君に届け』は昨日の『ソラニン』と併せて試しに借りたもので,まぁとりあえず合わなかったら困るから1〜3巻だけ,と3冊だけ借りて帰ったのだが,甘かった。今日慌てて,『君に届け』に届けとばかり,残りの4〜10巻を借りに車を走らせることに。
なんてすばらしい作品なんでしょう……!!
はっきり言って,こんな高校生活はすごくリアリティのある虚構であると思う*1。風早くんなんてもう,大概の女子が希求する理想像そのものじゃないか。こんな完璧な男子,アンドレの他に知りませんよ。親切で爽やかでスポーツが出来て格好良くて,その上爽子のような「陰気者」を見た目で判断せず好きになる度量の広さがあり,爽子が他の男子と話していると人並みに嫉妬したり,不安になると爽子を思わず連れ去ったりするような強引さもあったりして。こんなの,まさに昨今の女子の高望み「優しくて穏やかで格好良くて対等の存在でいられて,でもちょっと強引で,いざと言う時はリードしてくれる人がいい」の具現化じゃないか。女子の理想が高いというのは,おそらくは十中八九,少女漫画の架空の王子様の存在によるところが大きいと思う。人格と恋愛観を8割方形成するじゃないですか,思春期の読書は。爽子も爽子で,こんなに悪意のかけらもない子,私は見たことがない。そして2人を取り巻く環境も,大変協力的でほんわかしている。くるみちゃんや健人のような悪役(とまでは行かないにせよ,2人の恋路をかき回す存在)の存在感はあくまで,2人の恋愛におけるスパイスとしてくらいにとどまる。あまり順風満帆なので,裏をかきそうになってしまうくらいである(特に今は,陰惨な女同士の憎み合いの物語『グロテスク』を読んだばかりなので,ことさらそう思えるのかもしれないが)。
しかしもう,そんなことはどうでもいいと思えるほど素敵である。少女漫画に対して「出来過ぎ」だなどという批評のなんと無粋なことか。ティーンエイジャーの女の子が初めて恋を知り,その恋が頭の9割方を占め,どうにもならない片想いの日々に一喜一憂し,それに呼応して読者である私たちも一喜一憂する,これぞ少女漫画である。もうこの2日間は嫌というほど一喜一憂してしまった。ある時は爽子の目線で,ある時は爽子の友達のような目線で。8巻の途中から9巻にかけては,もう人生の1/3くらいのじれったさを味わったような気がする。ムズムズムズムズしました。意識しすぎてバレンタインのチョコが渡せないとか,会話がままならなくなるとか,そこまで行くと若干共感できなかったが(というのは私が,相手に対する恋愛感情に気づいた瞬間に「よし,じゃあ善は急げですぐにアプローチを開始しよう」とメールを送ったりし始める機微のない「肉食系女子」だからかもしれない)。でも爽子は健気で健気で,彼女が何かに感激するたびに私まで泣いてしまいそうになった。シャイな彼女なら,バレンタインのチョコやら渡せなくても無理はない。

風早くんはすごく「男子」 なんていうかすごく「男子」

3巻p. 60より。ああ可愛い。あああああとても可愛い。私も恋がしたーい(当然の帰結)。
少女漫画の良さというのは,インスタントでない恋に一生懸命全力投球している姿を描き出すことで,いわば恋の重みを実感させてくれるところですね。自分の気持ちに気づくところにまず時間がかかって,すぐ告白するわけでもなく,相手の気持ちがわからなくて悩んで,成就したらしたで,今度は試練に悩んで。この漫画において,そういう意味で興味深い存在は,担任「ピン」こと荒井先生である。生徒と年が近く,また仲も良いがおよそ教師らしいところもなく,「立派でない」教師として描かれている先生だが,時に無意識のうちに意味深長なアドバイスをしていたりする。なんだかんだ言って,結局は大人として,恋や人生に初めて悩んでいる生徒のことがかわいいのだろうと思わせる一面である。
現在進行形で恋をしている人にはもはや必読に近いと思うが,恋をしていない人にももちろんおすすめ。ひとつの恋にめいっぱい取り組む真摯さが伝わってきて,ちょっと純粋な気分になれます。続きが気になるわぁ。

*1:こんな素敵な高校生活を送った人間がいたら出てこい!許せん!