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Monster

音楽


嵐の新曲『Monster』だが,最初に聞いたときから何かダサく感じる。しかしその理由が明確につかめない。別に曲が悪いわけではない。むしろ曲はかっこいい部類に入ると言ってもいい。間奏部分の変拍子がちょっと微妙ではあるが,しかしそれが原因であるというほどでもない。ダンスも素敵である。しかし何かダサい。そしてその理由が今日,やっとわかった。歌詞の出来にむらがあるのである。
あくまでも「むらがある」のであって,全部が全部悪いわけではもちろんない。それどころかすごくいいところもあって,例えば「君の叫びで僕は目覚める」「あなたがいたから生まれてきたんだ」なんて,字義通り怪物が目覚める/生まれることを指すのと同時に,恋が成立するのは相手の求めあってのものであるということも両義的に示しているように思えるし,「今宵の闇へ君をいざなう/連れ出す」「夜が明けるまで近くにいよう」「朝が見えるまでとなりにいよう」も,異形の物が跋扈する闇と恋の舞台となる夜とを両方指していてロマンティックである。陳腐なようだが「見かけじゃなくて心を抱いて」も,ちょっとオペラ座の怪人っぽい切なさがある。
しかし問題はこの一節である。もうこの一節がすべての調和をぶち壊していると言っても過言ではないと思われる。

このスリル 止められない 怖がらせたい
だけど本当は君が好きなんだ

せっかく今までよかったのに,いきなり何だこのストレートな物言いは!もちろんストレートな歌詞が生きる場合もあるが,この曲は明らかにそうではない。他の部分の象徴的な歌詞と比べ,とんでもない落差である。思いつかなかったからこの部分だけ適当に作ったと思われても仕方ないんじゃないか。特に「だけど本当は君が好きなんだ」って,それをはっきり言ったらおしまいである。それから「怖がらせたい」,素直に疑問である。なんで?……とこんな具合で,この部分に関してはもう論外にダメだと私は思うのだが,他にも納得できない歌詞はあって,例えば「一万年の愛を叫ぼう」,これはモンスターなら「永遠の愛」にした方がしっくりくる。それからこのご時世に「12時を少し過ぎる頃」が「月明かり草木眠る頃」とも思われない。多くの子供の心にトラウマを残す有名なホラー絵本『ねないこだれだ』では「こんなじかんにおきてるのだれだ」の文章に対応するイラストがなんと21時を指す時計なのだが,それと同じくらいミスマッチなミッドナイトである。

そういうわけで,ホラーもので曲を作るという発想は斬新だったと思うのだが,せっかくのいい素材を生かし切れていない印象が残り,残念なことこの上ない。ホラーものの元祖であり不朽の名作である『Thriller』など,先人の遺産をきちんと勉強すべきであったと思う。いや,勉強の痕跡はあるのだが。「気づいたときはもう閉じ込める 逃げ場はない」とか「ドアのない部屋に迷いこむ 誰か見てる」とか,明らかに『Thriller』の影響であろう歌詞がそこかしこに見えるので*1
しかしPVに見るソロパートの大ちゃん(「君の叫びで僕は目覚める 今宵の闇へ君をいざなう Monster」の部分)はこの上なく美しいです。彼は怪物くんなんてやらず,『インタビュー・ウィズ・バンパイア』とか『トワイライト』みたいな美形の吸血鬼役でもやった方がいいと思うのだが。それからニノは,なんかだんだん,自分の色気に気づいてきましたね。いや,そりゃ見られる商売だし,前から気づいていたとは思うが,あまりよくない傾向な気がします。ニノの最大の強みとはクリント・イーストウッドの心をつかんだ哀愁と,そして何よりも「自覚されない」色気であったのだ。これが松潤とニノとの決定的な差異であったのである。狙わない分,ふとした場面で見える色気にはっとさせられる。自覚がない分,これで自覚されたらどうなるんだと想像を煽って危険である。それが自覚されてしまったら,途端に面白みがなくなるような。狙いが見える演出ほどつまらないものはない。杞憂であればよいのですが。まぁ大きなお世話ですが。

*1:'Something evil's lurkin'in the dark', 'You hear the door slam/ And realize there's nowhere left to run'