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第60回西洋史学会大会1日目

余暇

朝起きて1階のファミレスでご飯を食べた後,紀要を売りに一足早く会場へ向かわれる先輩を送りだし,D1女子は3人で地獄めぐりへ。この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ。
とはいえ,すべての「地獄」を見て回るには2時間半ほど要するらしい。とりあえず地獄のあたりまでバスで向かい,それからどう回ろうかと考えていたところへ,観光案内のおっちゃんが現れ,観光バスに乗った方がいいだとか,タクシーを使えだとか,そういったことを言いだす。一回目はなんとか逃げたのだが,では最も美しそうな「海地獄」から回ろうかと坂を上がり始めた時,またしてもタクシーの運転手につかまる。「さっきも学会に行くとか言ってる先生乗せたよ」「地獄なんて,海地獄と龍巻地獄と血の池地獄見ればそれで十分だよ。あとは全部人工なんだから(!)」という彼の発言に心を動かされた上,そもそも学会の時刻も迫っており,背に腹は代えられない状態であった私たちはついにタクシーをチャーター。

龍巻地獄


ここから先はすべて運転手さんの言うがまま,連れて行っていただいた。まずは「今ちょうど吹きあがってるよ」という龍巻地獄へ。「ちょうど吹きあがってる」とは,間欠泉であるところの龍巻地獄が30分スパンで10分間ほど吹きあがる,まさにその時間に来ることができたということ。確かにこれ,吹きあがっている時に来ないとただのお湯である。噴水装置も何もなく熱湯が吹きあがる様子は,なかなか壮観でありました。

龍巻地獄,裏山の風景。東京はこの週末とても寒かったそうだが,別府ではさわやかな晴天,飛行機雲までこんなに綺麗にはっきり見えました。

血の池地獄


続きましては血の池地獄へ。訪れた3つの「地獄」の中では,この血の池地獄が最も「地獄然」としていた。もちろん湯が赤いわけではなく,底が粘土であるために赤く見えているのだとか。龍巻地獄はスペクタクルなタイプの壮観だったが,こちらはなんともsublimeであった。この一帯をして「地獄」とは,本当によく名付けたものである。聖金曜日に暗い森の中に迷いこまなくとも,こんなところにあら地獄。ちょっとそこまでぶらり地獄。別府恐るべし,いや畏るべし。カメラに向かってのんきにピースなどしている暇があったら,きちんと人生のあれやこれや悩んでくればよかったかもしれない。

危険・熱湯・立入禁止。柵はあるはこんな表示はあるは,それにしても親切な地獄である。

別府のユーモア。ちなみに昨日,大分空港で荷物を受け取るべくベルトコンベアの前に並んでいたら,ベルトコンベアが動き始めてすぐに流れてきたのは巨大な「寿司」であった。もちろん客の荷物ではなかったので,おそらく空港側のユーモアである。大分いいとこ一度はおいで。

海地獄

血の池地獄に感嘆したら,最後の地獄・「海地獄」へ。ここは運転手さんが「絶対シメに連れてきたい」とおっしゃったこだわりの場所である。綺麗な風景見て終わる方がいいでしょ,とのこと。
 
海地獄の手前で蓮を育てていて,その花が咲いていたり,なんとも風情がある。大きな池では「オオオニハス(大鬼蓮)」を育てていたが,恐ろしげなその名前とは裏腹に,まだ「赤ちゃん蓮」でとても小さかった。

はい,海地獄。なんということでしょうこの美しさは。「血の池」の時と同じく,こちらも底の岩が原因で青く見えているのだとか。ちなみに,手前のあれはみんな大好き温泉卵である。

鳥居も入って,とんでもなく幻想的な風景ではないですか。ありがたやありがたや。もはや地獄というより浄土な雰囲気。

絶景かな

別府地獄めぐりのもう1つの目玉は地獄で蒸した「地獄プリン」なのだが,運転手さんに言わせればそこらで売っているものはまがいもので,本家本元の「岡本屋」のものしか食べてはならないとのこと。というわけで,地獄を3か所めぐった後は別府八湯の中の「明礬(みょうばん)温泉」にある岡本屋へ向かう。

運転手さんおすすめの絶景スポット。高架も別府湾も見渡せる。東京の絶景といったらやっぱり展望台から見下ろすビル街とかになるのだが,地方で見る景色は建築物と自然の融合が素晴らしい。瀬戸大橋のあたりを思い出しました。

岡本屋はこの絶景スポットの隣。もちろん絶景を堪能した後はプリンを堪能いたします。最近の市販のプリンはとろける口どけばかりを追求していて,たまに堅いプリンが恋しくなる。これは堅くもないのだが柔らかくもなく,生プリンと焼きプリンのいいとこ取りといった感じ。お取り寄せも可能なので,留学壮行会やインスペクションの時など,みんなで集まる時ぜひ研究室でお取り寄せしましょう!
プリンを食べながら運転手さんの恋愛&人生指南を伺う。なんでも運転手さんはタクシー運転手になる前は会社勤めをしており,部長にまでなった方であるらしい。「その時の部長よりも俺の方が絶対仕事ができたから,社長に直接そう言って蹴落としてやったの」「昔はモテたんだよ。デートでデパートに行ったらそこで会う全員付き合ったことがあったりして」「最近の男はダメだね。草食系って言うんでしょ?昔は好きな女の子なんて,彼氏がいても奪ってたけどね。だって彼氏がいない方がおかしいでしょ」など,ギラギラした野心と自信に痺れました。ちなみに今タクシー運転手をなさっているのは前勤めていた会社が倒産したからとのことだが,「固定給より歩合の方が俺燃えるんだよね」とのことであった。人生を楽しんでいる感じが何ともいい。

シンポジウム

今日はもう学会をサボって湯布院へ行けとの運転手さんのアドバイスをありがたく受け流し,12時半頃には真面目に学会の開かれる別府ビーコンプラザへ。参加費を支払った後,先輩方が紀要を売っている場所へ向かう。
 
「若手必携」。全国の西洋史学徒のみなさまはぜひぜひご購入ください。手前味噌だが,今回の文書館企画はとても参考になります。特に私のような,史料調査やったことがない人間にとっては。
1日目のシンポジウムは高校世界史教育についてのもので,歴史解釈の新たな枠組みだとかが発表される例年のシンポと少し毛色が違っていたので見なくていいやという人も多かったようであった。私もぽつぽつ入って聞けばいいやと思っていたのだが,一応教職を取っている人間としての使命感みたいなものがふつふつと湧き上がり,しかし午前中遊んだし,眠くなってしまうかもなぁ,どうしようかなぁ,どうしようかなぁ,などと悩みながら結局最初から最後まで会場に入ってしまった。報告者もコメンテーターも多かったが,聞いていて面白かった。現場の高校の先生や予備校の先生を招いて話を聞くというのもなかなか新鮮。
動物裁判 (講談社現代新書)それでも、日本人は「戦争」を選んだ
いろいろな現場の試みが紹介されていた。例えばある高校の先生は池上俊一先生の『動物裁判』を教材に,中世の「動物裁判」のような現代では考えられない事例を挙げて当時の人々の考えを探らせるという授業をなさっているらしい。私はとても面白いと思ったのだが(私の高校の世界史の授業は,もう典型的な地方進学校の授業=教科書の要約に過ぎなかったので),後から研究室の先輩と話してみると,先輩は「面白いと思うけど,でもあんなのレベルの高い生徒あってこそだよ」とおっしゃっていた。確かに。実際に教壇に立ってみてわかったのだが,まずは生徒の興味を惹きつけることだけで精いっぱいで,教科書の内容をわかりやすく面白く伝えるというためだけでも徹夜して授業を組み立てなければならないし,それから発展した授業なんて,実際には難しいかもしれない。教師と生徒の信頼関係も必要だろうし,雰囲気作りもしなければならないだろうし。特に地方進学校の方が,逆説的に「受験に直接役に立たないことはどうでもいい」という雰囲気も強かったりするので,本当に発展的な授業をしたければ私立名門校でやるしかないかもなぁと思った。それこそ加藤陽子先生の「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」連続講義@栄光学園みたいな。
それから「グローバルヒストリーも大事だし重要だけど,それだけじゃないよね」というお話も非常によかった。深沢先生が日本の歴史学について「日本の歴史学は,『過去との対話』ではなくて『過去の歴史研究との対話』になってしまっている」と述べられ,特に西洋史学は「政治学や社会学などの流行に飛びつく傾向がある」とおっしゃったのも印象的であった。

おさかな

シンポジウムの後は,またしてもみんなで夜の別府へ繰り出した。昨日は鶏肉だったので今日は魚を食べよう!と言っていたものの,いい感じの魚介系居酒屋(?)を見落とし続け,結局いけすと「関アジ」ののぼりのある居酒屋を見かけて入ってみる。やはり鶏肉は正直言って昨日の方が格段に良かったが,関アジをはじめとして鮮魚はとてもおいしかった。特に関アジはいけすでさっきまで泳いでいた最後の1匹をお造りにして持ってきてくれたので,尻尾などまだ動いていた(!)。かわいそうな気もしたが,食べてみると,ああ新鮮な魚っていうのはこんなに違うんだなぁと驚嘆するほど。そして今日もおいしい地酒をいただく。

ナイトタクシー

ご飯を食べた後は,私が強引にみなさんを追い立てて別府ナイトタクシーに詰め込み,夜景ツアーへ出発。別府の夜景は日本夜景百選に選ばれたものだそうです!もうこれは,彼氏がいようといまいと1人でも夜景やイルミネーションを見に行ってしまう私としては見過ごしてはおけません。

湯の花小屋。夜もなかなかいいねぇ。

夜景。やっぱり夜景は綺麗に撮れないのが残念。どなたか,普通のデジカメ(私はIXY使ってるのですが)でも夜景が綺麗に撮れる秘訣をご存知の方はぜひともお教えください。私にはわからないが,どうもマニュアル設定にそのヒントがありそうな気がするのですが。しかしこちらも地方の夜景は東京のみたいに延々光が連なっているというのではなくて,少し闇があるのがいいですね。もちろん中ほどの暗い部分は別府湾である。右の方にはゴルフの打ちっぱなし場が。
「土曜日の夜ですからカップルがいっぱいいます,みなさん邪魔しちゃいけませんよー」と運転手さんには釘を刺されており,確かに車は多く停まっていたのだが,カップルの姿は見えなかった。しかし私たちが夜景を見終わり,バスへ戻って展望台を出ようとする頃,車からわらわらとカップルたちが下りてきた。邪魔者がいなくなるのを待っていたんかい。どうやら別府随一のナイト・デートスポットであるようです。
それから「湯けむり展望台」にも立ち寄り,宿に帰ってからはまたしても温泉へ。学会は毎年東日本と西日本の持ち回りで開かれるのだが,今回はさすがに遠すぎると評判が悪く,「温泉学会」と揶揄される向きもあるのだとか。温泉学会。実に結構な話である。温泉あり観光あり研究ありで,この世の春じゃないか。