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世界報道写真展2010

余暇

ゼミのあと,恵比寿の東京都写真美術館で開催中の「世界報道写真展2010」を見た。
部門は10種類に分かれていて*1,だいたいそれぞれの部門の1位〜3位の作品が展示されている。さすが報道写真というだけあって,素人の私にもわかるほどどの写真も強いメッセージ性を持っているのだが,やはりその中でもわかりやすく衝撃的なのは紛争地域の写真である。例えば上に挙げたフライヤーの写真にも使われているのは総合の大賞を取った作品で,イタリアの写真家・ピエトロ・マストゥルツォさんの「夜間,屋上で現政治体制へ抗議する女性(テヘラン)」である。光の当たり方が絶妙で,緊迫した雰囲気がよく伝わる。
また,正視に堪えない写真も多い。今回の展覧会で最も強く印象に残った(残ってしまった)写真は,ソマリアのファラー・アブディ・ワルサメーさんの撮ったイスラム武装集団によって石打ちの刑に処される男(モガディシオ)」。なにかと最近物議を醸している,例の石打ち刑である。私は個人的に,いわゆる先進国が途上国の慣習を指して野蛮だの非人道的だのとあげつらい,介入することについては一応慎重でなければならないという考えの持ち主なのだが,ちょっとこの石打ち刑というやつは……人並みの人権意識を持っている人ならほとんど誰もがおかしいと思うはずの慣習であった。そもそも「石打ち」って,私もそうだったのだが,河原に落ちているような丸っこい小さい石をわらわら投げつけるようなイメージがありませんか皆さん(私だけですか?)。それが,石打ち刑に使われる石というのはコンクリートのかたまりみたいにごつごつした石で,しかもそれが乳児の頭くらいは優にあろうかと思われるほど大きい石なのである。死刑を宣告された人は逃げられないよう,胸まで土に埋められて石打ちに遭うのだが,この連作写真の真ん中で既にこと切れているかもしれない死刑囚の頭はもはや血だらけであった*2。またイラク戦争関連の写真も当然ながら多く出ていて,アメリカのユージン・リチャーズ氏によるイラク戦争で脳の40%を失った息子を手助けする母親(マサチューセッツ州)」はやっぱりギョッとさせられるものがあった。さらに「正視に堪えない」というわけではないが,イスラエルのリナ・カステルヌオボ氏の撮ったパレスチナ人女性にワインをかけるユダヤ人男性(ヘブロン)」は,見ていて悲しいものがあった。
一方で癒されるような写真もあった。たとえばイギリスのサイモン・ロバーツ氏の作品2つ「週末のソーントン・サンズビーチ(デヴォン州)」「レディース・デーでにぎわうエイントリー競馬場(マージーサイド州)」は,報道写真としてというよりもはや作品として美しかった。石打ちを見てかき乱された心が落ち着きました。またイタリアのフランチェスコ・ジュスティ氏による「サプールと呼ばれる「おしゃれで優雅な紳士協会」のメンバーたち(ブラザビル)」はなかなか素敵であった。我らがアイルランドからも唯一の出展があり,それはスポーツ・アクション部門だったのだが,パット・マーフィー氏(なんと典型的なアイリッシュネーム!)による「オープニングレースで落馬したジェイムズ・キャロル騎手(キルデア州)」。すごく迫力のある写真で,落馬の瞬間競馬場の全体が息を飲んだ様子が伝わってくるようであった。またアート&エンタテインメント部門の3位,エクアドルのカルラ・ガシェット氏による連作「タンゴ・ダンサーのセシとメメ(ブエノスアイレス)」など,写真でありながら映画を見ているよう。
……と,ざっと印象に残った,しかも今思い出せる限りの写真を挙げるだけでもこれほど出てくるような,素晴らしい写真展でした。誰が行っても心を動かされることは請け合いなので,皆様ぜひぜひ。ついでに恵比寿ガーデンプレイスは,いつ行ってもびっくりするほどオシャレな雰囲気です。デートの待ち合わせ場所を恵比寿ガーデンプレイスにセッティングする道明寺司(ドラマ版)は,間違いなく試合巧者です。高校生ならおとなしく新宿や渋谷で遊んでおけばいいものを,恵比寿。大人だ。そして,赤レンガ倉庫,恵比寿ガーデンプレイス立教大学倉敷アイビースクエア,これらは私が心ときめく場所たちだが,要するに私はレンガが好きなのだと思う。いっそレンガを枕に寝てしまえ。

*1:「ニュースの中の人々」「スポットニュース」「一般ニュース」「日常生活」「現代社会の問題」「自然」「ポートレート」「アート&エンタテインメント」「スポーツ・フィーチャー」「スポーツ・アクション」

*2:なんか黒人の人が血を流している光景って,白人よりも生々しい気がする……『アミスタッド』とかもそうだったが。