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ふらんす物語:出国編

余暇

成田へ

昨日あんなことは言っていたものの,やっぱり起きるのは相当辛かった。眠い体に鞭打って,重いスーツケースを転がして駅へ。最初からこんなスーツケースを抱えて長の旅路を行く気はさらさらなく,池袋からエアポートリムジンを使う予定だったのだが,思った通り最大の難関はエレベーターのない我がマンションであった。帰りは成田から送ってくれるわ。
リムジンは道路状況に左右されるので内心冷や冷やしていたのだが,予定時刻の30分も前に到着した。とりあえずこの忌々しいスーツケースをどうにかしなければならないので早々にチェックインしたのだが,スーツケースが重いのは何も私がか弱い乙女だからというだけではなく,標準の重量20kgを思いっきりオーバーしていたのであった。幸い,ちょっとした理由によって私は超過罰金の憂き目を免れたのだが,おかげで一気に憂鬱になり,おかげで出国の際も,隙あらば列に割り込まんとする中華人民共和国の方々に対して腹のひとつも立てずに済んだ。国家間友好の鍵は他の心配事である*1

シャルル・ド=ゴール

今回マイルを利用してのアップグレードに奇跡的に成功し,なんとビジネスクラス(正しくは「エグゼクティブクラス」だが,私の口からはそんなこと言えません)に搭乗しているのだが,おかげさまで機内にて修論のサマリーを仕上げることができた。エコノミーとビジネスとでは,機内の過ごし方が天と地ほど変わる。アップグレード成功を知ったのは昨日だったのだが,それからあわてていろいろなものを詰め直しておいて正解だった。ちなみに今も機内にて執筆しております*2
さてサマリーの下書きもできたことだし,フランスでぶんちゃんに貢ぐために持ってきた本でも読もうかと思う。唯一残念なのは,機内で供される映画も音楽もまるで魅力的でないことである。とか言いつつ『ダーリンは外国人』見て号泣したのだが。そしてそこにCAさんが機内食を運んでいらっしゃり,まったく恥ずかしいことこの上なかったのだが。国際結婚,なんかいける気がしてきた……!
ふらんす物語 (岩波文庫)
上海 (岩波文庫)
ぶんちゃんに持ってきた本は全部で3冊,永井荷風ふらんす物語』,横光利一『上海』,室生犀星『女ひと』である。荷風はまぁ文字通りとして,一押しはなんといっても室生犀星。犀星と言えばみなさまご存じの通り,これでもかというほど美しい抒情詩を書く詩人ですが,この随想集はもう,文章こそ美しいが内容はただの男子(?)である。私は昨日これに収められている「二の腕の美しさ」を立ち読みし,即決した。「二の腕の美しさ」は以下のように始まる。

随筆 女ひと (岩波文庫)
六月七月で美しいものは,自然もそうだが,人間歳時記ではなかんずく女人が際立って派手に見うけられる。四季のうちで女人が二の腕をあらわにする季節は,初夏ではことさらにあざやかなものである。秋,冬,春,の三つの永い季節のあいだに,いろいろな毛糸や布でつつまれ,保護されていた手首から肩のつけねまでの,二の腕はこの季節にはまばゆいくらいであって,しかも,惜気なくはだかのままである。……

要するに「夏は女の子の露出が増えてうれしい」「二の腕っていいよな」を豊富な語彙で表現するとこのようになるのです。詩人の底力,畏るべし。何がいいって,「秋,冬,春」は「永い」んですね。それも「長い」じゃなくて「永い」んですね。二の腕が隠されている季節というのは,犀星にとって永遠にも感じられるのですね。そりゃ初夏は「ことさらにあざやか」になるわな。「惜気なく」というところにも,そこはかとないフェティシズムを感じる。もう快哉を叫ぶがごとくなのだろう。女子のみなさん,あなたの二の腕が詩人をインスパイアしていると思えば,二の腕の1本や2本,「惜気なく」出してあげようかという気にはなりませんか。

シャルル・ド=ゴールからマルセイユ

さて,現在はホテルの部屋で書いております。TGVは遅れたものの,23時前頃にようやく着いた。空港のTGV駅はすぐにわかったものの,TGVに乗ってから席を間違えたりなど,ひやひやすることも多かった。時間どおりに着かないからマルセイユを行き過ぎてしまったのではと不安になったし(マルセイユは終点なのだが)。
マルセイユの駅まではぶんちゃんが迎えに来てくれ,駅の向かいにあるホテルのチェックインまで滞りなくやっていただいたので,私がやったことといえばwi-fiの接続とシャワーを浴びることくらいである。頼りになる友人というのは得難いものですね。ありがとーぶんちゃん(上階へ届け)。ドライヤーは使えないものと諦めかけていたが,私が持ってきたドライヤーはたまたま海外対応のものであったため,これで美しい髪で南仏を闊歩できると喜んでおります。幸先がいい。それでは日本のみなさまおやすみなさい。こちらは今,夜の1時でございます(時差に完璧に対応したのでこちらの夜にちゃんと眠くなる!)。

*1:余談だが,日本を旅行なさるような中国の方々は本気で裕福であるようだ。ヴィトンを両肩にぶら下げている人を私は初めて目撃した。左はダミエのショルダー,右はマルチカラーモノグラムの,えーと,型名を忘れた。

*2:もちろん,wordファイルで執筆したものを後から貼り付けたもので,インターネットはオフラインでした!