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だぶりん物語:An Claideamh Soluis & lost property編

余暇

今日は14時にUCDの先生とお会いする約束だったので,それまでナショナル・ライブラリーへ。

Molesworth St.にこんな建物があったんですが,フリーメイソン?建物の中では住人らしき方がいたって普通にネットに興じていたが。
こっちのアーカイブやライブラリーってどんなもんやら,と思って戦々恐々として出て来たのだが,登録してみるとまああっけないもんである。リーダーズチケットを作るだけだし,その手間も全然かからない。これはぜひ西洋史の後輩たちを勇気づけてあげたい(と思う先輩方が多くいらっしゃるから,最新刊のクリオの特集記事は「若手必携 欧州文書館事情」なのですね!みなさん買ってくださいね!)。
しかしながら私の説明がまずいのだと思うのだが,残念ながら「とても親切なアーキヴィスト/ライブラリアン」にはお目にかかれていない。メールにも「研究などについて説明するから相談に乗ってください」と書いたのに,昨日のUCDアーカイブのアーキヴィストはただただマイクロフィルムを持ってきてくれるだけであったし,今回のduty librarian*1もそのようであった。こうこうこういう史料がほしいんだけど,と言ってもぱらぱらと「gaelic league」「gaelic union」と入力して検索して,ごめんねーこれだけしかないみたいなんだよね,と言われるだけだった。他のことはほとんどうまくいっている今回の旅行だが,史料集めはとことん難航しています。まぁいざとなれば日本からでも頼めたりするし,日本にあるものもあるし,研究室の教育方針が「ある史料を使って書く(=料理の腕を試す)」であることを考えれば,私もこの際イチから出直すべきなのかもしれないが。みなさんすごいなぁ,しかし。史料調査1回目で欲しい史料をばっちり手に入れて帰ってくるなんて。
さて,慣れていないことだしおなかもすいたし,そろそろご飯を食べてぼちぼち向かった方がよかろう,と思って図書館を出ると,人だかりが。
 
ミーハー心が高じて,誰だかわからないのに写真を撮ってみた。彼らはnot 同一人物 but 双子です。人々のサイン攻めに応じていた。確か寮のお姉さま方が,あのスーザン・ボイルで有名になった「Britain's got talentで勝ち残った双子」の話をしていらしたが,もしかして,その人たち?

さて,今日のお昼はもう決めていたのです。昨日も行った「オニール」でフル・アイリッシュ・ブレックファストを食べようと。おっと注意書き。「ブレックファスト」とは言え,こちらではほとんどのカフェやパブが一日中供しているらしい。
アイリッシュ・ブレックファストは想像通り私の大好きな味であった。中央上にある2枚のソーセージみたいなもの(見るからにソーセージな3本の左)は,「プディング」と言って豚の血を固めたもの(!)であり,私は恐る恐る食べたのだが,とてもおいしかった。しかしこっちで毎朝私はソーセージとマッシュルームを焼いて食べているのだが,ほとんどアイリッシュ・ブレックファストを食べていたのだと気づいた。というわけでアイリッシュ・ブレックファスト,アイルランドにお越しの際にはみなさまもぜひどうぞ。
 
すでにこの日記ではおなじみになったであろう,グラフトン・ストリート。ビューリーズ・オリエンタル・カフェの全景と,「風吹かれ芸」をする大道芸人のおじさん。

UCDも2回目になると,一応の安心感があります。初めてのUCDが昨日の大嵐の中だったのでひどい大学に見えたが,晴れている(少なくともひどい雨ではなかった)となかなかいい大学に見える。噴水や奥の建物も,多摩センター駅のあたりのように見えなくもない。昨日に引き続き今日もオリエンテーションなので,そこらじゅうを新入生がうろうろしているのだが,私も何食わぬ顔で無料ピザにでもありつこうかしらとすら思った。

建物に入り,「Schools of Celtic Studies, linguistictics, folkloreはどこですか」と聞くと,「follow the red line」と言われた。「赤線地帯」という激動の昭和用語が一瞬頭をよぎった。
かくして時間どおりに先生の研究室に着くことができたのだが,どうも中で侃々諤々の議論が行われている。おそらくはこちらの生徒の面談が長引いているらしい。しばらく待つと,中から男子生徒が出てきたので中に入った。先生はとてもお優しそうな方であった。
さて,今回こそは「アンダーグラデュエイト,アイロートディグリー」とか「ダーティ・ライブラリアン」とか言っている場合ではない。とにかく落ち着いてゆっくり話そうと心に決め,「マイ,とりあえず椅子にかけてリラックスして」と先生がおっしゃるのに便乗して,「Thank you, I'm really nervous!!」と叫び,ついでに「できるだけゆっくり話してください」とも言い,もう白旗を掲げながら両手を挙げるというレベルの降参体制で面談スタート。
面談というかなんというか,先生のプレゼント攻勢であった。あれもあげるわこれもあげるわ,あ,そうだマイ,あの本は知ってる?あ,そうそう,ジャーナルアーティクルがあるからその抜き刷りもあげるわ,そうそうサインもしないとね,これアイルランド語で「会えてよかった」って書いたのよ,などと延々先生が歩き回りながら本やら論文を探しては私にくださる。しかも読むべき所に鉛筆でマークまで付けてくださるのである。これはあなたに関係あるわ,これは私の章だから読んでね,ああそうそうDeclan Kiberdの章も読んでもらわないとね,云々。私はひたすら,恐縮です助かりますとてもうれしいです,と言い続けた。もしアイルランド語わからなかったらすぐに言いなさいよ,章ごと翻訳してすぐに送るから(!)とまで言ってくださった。
しかしとりあえずはっきりさせておかなければならないのは,先生は1899年から1932年がご専門なのだが,私は主に1880年代が専門であるということであった。really helpfulなのは間違いないが,もし私が先生と同じく1899年以降に興味があると思われると困る。なので無理やり私の研究に関する話をねじこんでみた(in EIGHTEEN EIGHTIES, I think that...)。私は1880年代のリバイバルと政治の関係性を考えていきたいんだと言うと,それでもやっぱり私たちが強調しなければならないのは文化的側面だと思うわよ,と言われた。うーん,これに関しては4割賛成で4割反対,2割どちらともいえない。
以前別の先生からは「アイルランドでリヴァイヴァルをやっている研究者はvery fewだ」と言われていたが,しかしこの1か月で2人の先生と知り合うことができた。しかもダブリンで,である。これはもうやっぱり,歴史に限らなくてもいいかもしれない。とりあえず1年やそこらのvisitor studentとしては,なおさら。来年もしアイルランドに来られるようだったら,その時はどうぞよろしくお願いしますと頼むと,personally you are of course welcomeだと言われた。personallyというのはもちろん,制度的手続きを踏みさえすれば,ということだが。なんだか先が見えた気分になってきました!

晴れ晴れとバスへ。やっぱり広いだけが取り柄みたいなキャンパスです。でものびのびしていて,いい感じではある。
さて,事件はそのあと起こったのであった。ダブリンでの最高懸案事項が無事にすみ,最近乗り慣れた感のあるバスで気を抜いてしまったらしい。おそらくご存じの方も多いであろう,私が後生大事に持っているヴィトンのパスケース,降りてみたらないのである。どこにも。どうもバスに座って膝かどこかに置いていて,降りようと立ち上がったとき落ちたか何かして忘れたのではないか。わかった瞬間には真っ青になった。だってあの中,東大の学生証に国際学生証にルアス・バスの共通券,パスモ,UCDアーカイブのリーダーズチケット,免許証,とにかくありとあらゆる大切なカードが入っているのである。それをこの適当な街ダブリンでなくすなんて!
頭が真っ白になって帰宅し,とりあえずDublin busに電話した。遺失物係はあったのだが,何度かけてもつながらない。しかも17時に閉まるのに!もうこういうときは手当たり次第かけてみるに限るのである。というわけで全く違うが,efficiencyのデスクに電話。出た!案の定「かけるところが違う」「かけ直せ」と言っているが,何を言っているんだ。唯一の生命線を手放すわけがない。「違うのはわかってます,でもお宅の遺失物係の人たち何回かけても出ないもん!」と言っても,係の兄ちゃんは眠そうな声で「忙しいんじゃね(Maybe they're busy),明日かけてよ」という。「明日って,明後日にはダブリンを出なきゃいけないんです!ほんと困ってるんです(I'm very confused)!」「わかってる,わかってるって」「わかってますよね?じゃあ今から乗ったときとかの状況伝えますよ!いい?16時頃にUCDで乗ってどこそこで降りたんです。1階*2の1番前の席で,おとしたのはヴィトンのパスケースで,中には私のIDカードとか日本のドライヴァーズライセンスとか云々」とまくしたてて要所要所に「OK?」をはさみ,私の電話番号も無理やり伝えておいた。しかしまぁ,もう見つからないだろう,万一見つかったとしても私はもういないだろうし,一応寮の電話番号も伝えておこう,と思ってもう一度かけると,「Is it Mai? 今かけようとしていたの!」と女性の声。そして声はさっきの兄ちゃんにかわり,「They found your pass case」とのこと。うそー!あったの!「本当に?本当に?それ私のパスケース?」と詰め寄ると,「IDカードにMaiの名前が書いてあるから間違いないでしょ」と言う。わーい私のパスケース!
というわけで,明日朝イチくらいでオコンネルストリートのオフィスに行き,失われたパスケースを取り戻して参ろうと思います。しかし海外の街でものを失くし,それを取り返すというのは,我ながらちょっとすごい。レンタル携帯さまさまである。通話料かさんでしまったが,背に腹は代えられない。まぁ,そもそも物をなくさなきゃいいんですけどね。
今回のこともあるが,こっちで日本人が生き延びるコツをだんだんつかんできた気がします。何よりも大事なのは,こっちの人は人の話をあまり聞かない,というか日本人のテンポでは全く通用しないので,伝えたいことは自分からまくしたてることだ,と思う。会話の主導権を無理やりこっちにもってくることだと思います。今回もパスケースをなくしたと言うと,パスケース?ああ,じゃあ「もしあったら」「できれば」明日にでも連絡するわー,としか向こうは言っていなかったのである。日本のバス会社であれば聞くであろう,何時の何行きのバスでどのあたりに乗っていたか,なくしたものの特徴は,など全く聞かずに。もちろん運行中の運転手に連絡をするなどという申し出もなく。なのでそれは全部自分から言わなければならなかった。今ドライバーに連絡してよ,とまで。私は割と日本でもずけずけ物を言う無神経女なのでどうとでもなるのだが,おそらくこういうことは,ほとんどの奥ゆかしき日本人の皆様は苦手だろう。大切なのは土足で踏み込む勇気です!こちらではほら,家の中だって土足なんだし!
さて,本当に私のパスケースなのかどうか,はたまた内容物はすべて無事かどうかなどは明日行ってみなければわからないが,とりあえずサバイバル能力はついてきたらしい。1週間でも2週間でも海外に出てみれば,人間大きくなれるものですね!まぁ,私が不要なトラブルを招いているだけだという話は置いておいて。
ああ,しかし疲れた。本来ならUCDからいったん寮に帰ってもう一度ライブラリーに行くつもりだったのだが,バス・ルアスチケットはパスケースの中だし,何よりネゴシエーションで疲れたので,もう今日は外出しません。ふー。

*1:カウンターで「ダーティ・ライブラリアンに相談したい」と口走ってしまった。詳しくは書かないが,とんでもない間違いです。英語武勇伝が着実に増えている。

*2:ダブリンバスは2階建て