読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「いいところ」→「足りないところ」

学校

今秋からTAの一員として,研究室で後輩たちの卒論指導に携わっている。卒論指導は年間通してやっているのだが,秋以降の卒論指導で難しいのは,いよいよ執筆が近付いてきて切羽詰まっているのに加え,就職希望で「なにはともあれ卒業したい」面々も駆け込んでくるところである(院進学希望者は夏にも1回やっている)。理想的なペースは夏までに文献収集を終え,夏休みにそれを読んでだいたいの構成を考え,秋にまとめ,晩秋から12月にかけて書き始める,ということになるのだろうが,ともすると「日本語文献しか読めてない」だったり「文献を見つけてもいない」だったりする人たちもいるので,そういう人たちには最善の策と優先順位を一緒に考えなければならない。代わって院志望の人たちには,よりよい論文を書くための方策を一緒に考える,ということになる。この前は自分がこれを受けていたのに,今や自分がTAの立場で指導していると思うと感慨深いが,臨機応変に対応しなければならないので割と頭を使う。思えば私も,働いているみなさんと同じ年齢と考えればもう社会人3年目に入る頃で,そうなると新人指導の役目に携わり始めてもおかしくはない。負担が全然違うと思うけど,大変ですね。
中でも一番気を遣うのは,簡単なようだが,どうすれば相手のやる気をいい方に引き出すことができるかということである。いかにペーペーとは言え,私だって一応D1で,論文も2本書いているから,学部生の発表を聞いているとアラにも気づく。それをどのように気づかせるかということなのだが,びしびし「あれもダメ,これもダメ」と指摘すると学部生も萎縮するし,プライドも傷つけかねないし,トラウマになってしまうかもしれない。単純に学年が上(=経験年数が上)なのだから,私たちから見て彼らに足りないところが多いのは当たり前である。それを利用して虐めるような形になると,単なるパワハラだし。当たり前のことだが,指導する立場とは言え,相手の尊厳まで傷つける権利はない。しかし指導には必然的に上下関係が生まれるし,こちらはそのつもりでなくても相手が傷つくかもしれないというのはある意味いたし方ないことで,じゃあどうするか。簡単なことで,8割方は「言い方の問題」である。ではどのように言いましょう。これはもう,OJTである。というわけで,OJTに少しでも役立てるため,後輩指導の時には横に自分用メモを置いている。以下は今まで気づいたことの例。

何か指摘する時には,まず相手の「いいところ」を挙げて,そのあと「足りないところ」(=「改善したらもっとよくなるところ」)を挙げる。

これはいつも一緒に後輩指導にあたっているD3の先輩を観察していて(すみません,勝手に観察して)今日気づいたことなのだが,気づいてみれば割と当たり前のことだった。ついでに言えば,建設的に物事を進める上で基本的なことでもあった。まず相手がこちらの話を受け入れやすい態勢を作る,ということなんだろうと思う。誰だって頭ごなしに否定する人の意見には反発したくもなる。私も今までいろんな人に自分の研究について相談してきたが,欠点をあげつらわれるだけだと,「そんなに私はダメか」と自信喪失&意気消沈するだけだった。モチベーションも上がらないし。対して,相談して視野が開ける人だったり,この人に相談してよかったと思うような人は,「あなたの研究の面白いところはここだ」「ここが前に比べてよくなった」→「ここをこうすればもっとよくなるからがんばれ」,という順序でアドバイスをくださる方が多い気がする。せっかくこんなに親身になってアドバイスしてくれる人がいるのだから,アドバイスしてよかった,無駄ではなかったと思っていただけるようにがんばろうとモチベーションも上がるというもの。要は自分がしてもらって嬉しいように,他の人にもしてあげましょうということですね。汝の欲せざるところを人に施すなかれ,ということですね。論語ですね。なるほど。一人で納得。
あと,

「例えば私は○○だと思うが,あなたはどうですか」という形の質問で考えを引き出す。

というのも大事かなぁと思った。一方的に延々指摘しているだけだと,ずっと「はい,はい」と言いながらメモを取るだけになってしまう。あくまでも論文を書くのは彼ら自身なのだから,こちらから提示するだけではなく,彼らの考えを最大限引き出してあげるというのが私たちの仕事ですよね。でもいきなり聞かれても答えにくいところもあるので,その時に有効なのが「私は○○だと思う」の一言かなぁ,と思う。ヒントあるいは参考にできるものが何かひとつでもあれば,いたずらに答えに窮することもない。
それからこれも単純なことだが,話し方やら表情にも気をつけないといけないなぁ,とつくづく思います。私自身について言えば,昔から「怒ってる?」だのなんだのと誤解されることが多い可愛げのなさである上,話し方も結構早口と来ている。だからと言ってヘラヘラ笑うと気色悪いので,まぁ落ち着いて柔和に話すくらいでちょうどいいんでしょう。
私は教育実習にも行ったし,家庭教師もずっとやっていたし,人になにかを教えるのには比較的慣れていたつもりだったが,それにしてもまだまだ学ぶべきところがたくさんある。よく教師の仕事は一生勉強だと言うが,まさにその通りであるようです。TAの機会が与えられて本当によかったと思う。せっかくならいい研究者になるだけではなく,いい教育者にもなりたいですね。私の周りを見る限り,素晴らしい教育者である先生方は,おしなべて素晴らしい研究者でもある気がする。後進を育てるというのも,研究者の大切な仕事ですからね。今は思いっきり育てられてばかりだが,ゆくゆくは私も,本当の意味で立派な研究者になりたいものです。機会があったらコーチングの講座でも受けてみようかな。