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次の保証はない

つれづれ

日経 WOMAN (ウーマン) 2011年 04月号 [雑誌]

日経 WOMAN (ウーマン) 2011年 04月号 [雑誌]

たぶんほとんどの女性はロールモデルを欠いている。丸ごとこんな生き方をしたいと思えるような女性の先達はなかなかいない。仕事はできていてもプライベートは犠牲になっていたり,あるいはその逆で,素敵な結婚はしていても仕事は諦めていたり。なにも女性の先輩方にもっとしっかりしてほしいと言っているわけではなく,女性が男社会で生きていくというのはそれだけ大変なことであり,またその歴史も浅いことがここに反映されている,と私は思うのである。そして私自身,ロールモデルにしたいと思えるような女性には,歴史上であれ現実であれ,めぐりあっていない。そのロールモデル探しに一役買っているのが,日経WOMANの連載「妹たちへ」である。先月号からバレリーナの吉田都さんが執筆していらっしゃるのだが,特殊な世界で生きていることに加えて留学など,私にとっては参考になることが多い。ここまで参考になるものには初めて出会った,と言っていいかもしれない。
今日,4月号連載の「妹たちへ」を立ち読みしたのだが(すみません,特集には別に興味が湧かなくて買ってません),またしてもいろいろと胸に迫るエピソードがあった。留学してすぐの頃,授業風景を知らない人が見ていることがあり,何もしらないままレッスンを受けたらそれは有名なバレエ団の理事長でスカウトに来たのだった,吉田さんは数人のクラスメイトとともに別室に呼ばれ,バレエ団への入団が決まったことを告げられたが,そのときひどいホームシックに悩んでいた吉田さんが思ったのは「これで帰国がまた延びてしまう」だった,というエピソードとか。やっぱり異国に長年暮らすというのは,生半可なことではないのですね。
しかしそんな中ですごく印象深かったのは,そのバレエ団でコールドの一員だった吉田さんが急遽,プリンシパルの代役で「白鳥の湖」の全幕に主役出演することになった時の話。バレエに対してだけは貪欲で,どんなチャンスでも逃さないようにしていた,そのためにありとあらゆる可能性を考えて練習していたということ。この話があった時,吉田さんがオデットの踊りを知らなかったら,絶対にこのチャンスは逃していたはずである。プリンシパルの代役をコールドの1人が務めるなんて,おそらく万に一つよりも低い確率のことだが,そんな確率のことに対してもきちんと準備していたということである。しかもオデット役って,私はバレエを全然知らないけれど,片手間でやってできるようなものでもないでしょう。この人,とんでもない人である。すごいとしか言いようがない。バレエの世界は「次が保証されていない世界」だと吉田さんは書いていた。その中で生きるのは,並大抵の緊張感ではないはず。
ひるがえって私の場合,次がないなんて,そこまでの緊張感を持ったことはあったかなぁ,と思った。建前では思ったことはあったかもしれない。一事が万事の世界に私も一応生きてきたはずで。ピアノの舞台でも,下手な演奏を一度でもしてしまえば,お客さんは二度と,少なくとも私の演奏目当てには来てくれない。本業の方でも,研究発表はもっとそうであるはず。だから1回1回大切にしなければと一応心がけてはいるものの,でもどこかで「失敗しても次に生かせばいい」という甘えはあったような気がする。でも「次がない」とすると。夕暮れのTSUTAYAで,これではいかんな,と切実に思いました。思えば研究室関係の庶務とゼミコンパの幹事ばかりやっていたような気がするD1の1年間だった。昨日もたまたまメールした,同じD1の男の子(専門は違うが)相手に話して,「わかるわー」という返事をもらい,「わかってくれてうれしいです」とか言っていた。でもこんなんじゃダメだな。ほんとに。わかってもらって安心している場合ではないな。目が覚めました。来月号も楽しみにしておこう。
妹たちへ (日経ビジネス人文庫)

妹たちへ (日経ビジネス人文庫)

妹たちへ2

妹たちへ2

単行本化もされてます。