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Wave of death

つれづれ

今朝をもって,今週いっぱいで予定されていたすべての会合の中止が決定されてしまった。いよいよ何のために東京なぞに来たのかさっぱりわからないが,無事だっただけありがたいと思わざるを得ない。家族も友人も心配していることだし,今日ではないが,岡山に帰ります。瀬戸内海沿岸というのはなんと恵まれていることかと痛感した次第。さきの大震災に伴っては,我らが宇野港でも「津波」が観測されたらしく,そういうときは一応ニュースになるのだが,0.3mだか0.5mだか,もはやニュースにすること自体が不謹慎と言いたくなるようなレベル。それは「波」と言うのではないか。三陸では街がまるごと壊滅していたりするのに。
ところで,言語はそれが使われている地域の風土や風習と密接にかかわるものである。フランス語にはキスを表す言葉が,エスキモーでは雪を表す言葉が幾種類もある。アイルランド語では確か風だったか。それはいいとして,そういえば「地震」もそうではないかしらとちらっと思った。英語ではearthquake,フランス語ではtremblement de terre,アイルランド語ではcrith talún,いずれも説明的な言葉である(アイルランド語でcrithはtremble,talúnはearth)。日本語で「アイデンティティ」を適切に表すものがなく「自己同一性」などと表すように,説明的な言葉が用いられるというのはその地においてぴったり合致する概念がないということを指すのである。在仏の友人にもその話をしてみると,確かに向こうではそもそも「地面が揺れる」という感覚がどんなものやらわかっていない人が多いということであった。「地震」という熟語がすでにある時点で,日本がいかに古くから地震と縁が深かったか思い知らされる気がする。ちらっとOEDなぞ調べてみると,earthquakeという語の初出は14世紀でした。もしかしたら古英語などあるのかもしれないが。
そして,ましてや「津波」など「tsunami」で通っている。これ,絶対わからんでしょうと昔から思っていたのだが,さきほどid:saebouさんのところのお写真を拝見してあっと思った。

ああ,昨日アイリッシュ・インデペンデント紙のHPで見た「Wave of death」という見慣れない言葉,あれは津波のことだったのね。こんな言葉見たことがないので,「死の連鎖」「死者が続々と出ている」とかそういう意味かと思っていた。それかもしかして,私が無知だっただけですか?
それにしてもWave of death,成句としてはイマイチかもしれないが,少なくともtsunamiよりは向こうの方々にもわかりやすいだろう。Apocalypseと同じように,聖書的アナロジーで理解することもできるだろうし。こうしてできるだけわかりやすい表現を使ってくれているだけでも,向こうの方々が少しでも寄り添おうとしてくれているのが感じられて,ありがたいような気がします。