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あなたの声に心は開く

音楽

ご要望のシリーズ「舞・プリヴェ(Private Mai)」第2弾。もっとも私の生活にオフィシャルなんてあるのだろうか?ハーバーマス先生,アーレント先生?
先週から金曜日の授業の後,渋谷の教会を行脚しております。先週は中渋谷教会,今週は渋谷教会。なぜそんなことをしているかというと,教会で先の震災の復興支援チャリティコンサートが行われているのです。声楽の今回は,バッハから始まりブラームスが6曲,日本の作曲家2人の曲が3曲,ツェムリンスキー,ロッシーニサン=サーンス,それにリスト2曲というプログラムであった。
授業の終わる時間の関係でバッハを聴き逃したのだが,ブラームスの歌曲はさすがに美しくてうっとりした。ああやっぱりドイツ語はとても美しい。それは次なる日本の作曲家の曲を聴いて改めて実感した。ひとつは谷川俊太郎の詩に曲をつけたものだったのだけど,なんというか,少なくとも私には,しっくりこなかった。曲もちょっと現代的だったのもあるかもしれない。ブラームスがとてもロマンチックだったので(ロマン派ですからね),なおさらそう思わざるを得ない感じであった。どうも潜在的な西欧中心主義なのか,日本語ってあまりオペラ歌唱には向かない言語である印象があるのだけど,そんなことを言ったら黛敏郎先生とか團伊玖磨先生の亡霊にとり殺されてしまうかしら。しかし日本の作曲家2人目の2曲目『ihr(ドイツ語で「あなたたち」)』は,ピアノと2人のソプラノがただひたすらEとFisとDisの音を歌い続けるという独創的なものだったのだが(歌詞はなかった),これはとてもよかった。
後半はなんといっても,もうサン=サーンスとリストでした。特に私の大好きな『あなたの声に心は開く』,生で聴くのは初めてだったので,プログラムに入っているのを発見したときは興奮した。

人類史上初のハニートラップ。「ああ,私の愛にこたえて,私を陶酔させて」って,よく考えたらすべて自分は受け身である。しかしこんな,しっとりセクシーな美しい曲で迫られたらサムソンでなくても参ってしまいます。歌っている人が絶世の美女に見えてくるおまけつきである。
それからリストの歌曲,私は初めてでした。『ペトラルカの3つのソネット』から1番と3番だったのだが,いやー,リスト,激しい。というか,ペトラルカが激しい。びっくりした。ペトラルカ,こんなんだったの!?


Veggio senza occhi, et non o lingua et grido;
et bramo di perir, et cheggio aita;
et o in odio me stesso, et amo altrui.


Pascomi di dolor, piangendo rido;
egualmente mi apiace morte et vita:
in questo stato son, donna, per voi.


目がないのに見ようとし 舌がないのに叫ぼうとする,
滅ぶことを希いながら,救いを求める
自分を嫌になるのに,他人を愛している


苦しみを糧に泣きながら笑い,
死も生も同じようにいとおしい
こんな私にしたのは,奥様,あなたなのです

1番から第3〜4スタンザを抜粋してみました。こんなに情熱的だったんですか,ペトラルカ。「自分を嫌になるのに他人を愛している」とか「苦しみを糧に泣きながら笑い」とか,結構ぐっと来ます。いやー,全然知らなかったわー。
それにしてもやっぱり声楽ってよいです。そうだ,忘れていたけれど,留学中に考えている「持ち運びできて弦でも管でもない」楽器,喉があったじゃないか。私が行きたい大学には「ピアノの会」はさすがになかったが,こういうサークルがあった。見学に行ってみようかしら。