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すぐに消えそうで悲しいほどささやかな光

余暇


板橋区ホタル生態環境館にて,この週末3日間限定でゲンジボタルの夜間特別公開を行っていると聞いた。アイラブ光りもの。25歳を過ぎたら,ピカピカキラキラした光だけではなく,儚げなものを愛でるたおやかさも身につけたいですよね。清少納言先輩も「蛍の多く飛び交ひたる」を夏の夜の美しさとして挙げていらっしゃいますしね。というわけで,低気圧のせいでとても眠いにもかかわらず,見に行ってきました。
……しかし甘かった。ぱぱっと行ってぱぱっと見てぱぱっと帰れるものだと思っていました。19時半から入場開始,18時半から「整理券」を配り始めるとのことであったが,張り切って早く行って待つのもいやだしな,と思って19時半ちょうどくらいに着くように行ったのである。すると会場は大賑わいであった。渡された整理券は17番(写真参照),入場時刻は20:50頃とのこと。
約1時間半後!?
あたりを見回す。ザ・住宅街。少し離れたところにセブン・イレブンが1軒。うそでしょうこんなところで1時間半。しかも暗い。本も読めない。他に見に来た人々は,ホタル生態環境館の周辺を離れず,めいめい好きなことをしているようであった。万事休す。郷に入れば郷に従え。しかたないので乾いた植え込みに腰かけ,たまっているメールにひたすら返信をするという作業をやり続けた。メールを打つ速度がこんなに速いのをこれほど恨んだことがあっただろうか。というか,そもそもなんで私はホタルを見たかったんだっけ。なんでいきなりホタルよ。と,全然進まない整理番号にイライラしながら何度となくそもそも論に行きつきかけては,「もうすぐだから」と自分をなだめ,ようやく整理番号17番が呼ばれた。時刻は21時前くらい。すごい!ディズニーアトラクションの待ち時間並みに正確!!
ホタルは飼育小屋の中で見るのだが,そこに行くまでにもう少し待つ必要がある(これまたディズニー方式)。待ち時間の間,係のおじさんのお話を拝聴するのである。
「みなさん,ホタルの小屋の中に入ったら絶対に携帯電話やカメラを使わないでください。強い光が当たるとホタルは死んでしまいます」
えっ,そうなの。死ぬの。そこまで繊細な生き物なの。
「あまりにも強い光を見ると,ホタルの気持ちがしゅんと落ち込んでしまうのです。すると近くにキレイなメスがいても,あるいは若い元気なオスがいても,子どもを作ろうという気にならないかもしれない」
なんと物理的ダメージというよりは精神的ダメージであったのがちょっといまいち信じられないところなのだが,それにしても「しゅんと落ち込んで」性欲に関わるなんて穏やかではない。
さて,そんな感じのご説明を聞いたところで,いよいよホタル小屋の中へ。1時間半近くも待たなければならなかったことや説明や,ありとあらゆるもやもやを霧散して余りあるほど,ホタルの乱舞は美しかった。ホタルが「しゅんと落ち込んで」しまうので写真を撮れなかったのが残念。撮っていてもうまく写らなかっただろうけど。ホタルは光でコミュニケーションをとるのだとか。人間が夜景のきれいなレストランで女性を口説くのと同じパターンですね(ちがう?)!
ホタルは20年ぶりくらいに見た気がする。こんな美しいものが保護区にしかいないというのは残念ですね。「夏は夜」のくだりも,あまりぴんとこないものになってくるのでしょうか,昔の人と共有できる感情が少なくなってくるというのは,文学部の,また歴史を専攻する学生として,寂しいことだなぁと思います。