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ほとんどの重荷は下ろしてしまった気がする

余暇

今日も朝10時半から夜は21時過ぎまで,マイクロリーダーと見つめあってきました。以前,P会のはなえ先輩(理系)が「せっかくおしゃれしても研究室の計器くらいしかわたしを見てくれない」とおっしゃっていたが,ついにその心境がわかった。マイクロリーダーよマイクロリーダー,世界でいちばん美しいのは,いや,お前の半径1m以内でいちばん美しいのは誰。「1位なしの2位」とかはやめてね。
しかし今日は昨日のような徒労感は感じずに済んだ。徒労感どころか,超のつく達成感である。一連の作業工程に慣れたのか,昨日の3倍近くの効率で作業が進んだのです。昨日のマイクロフィルムは1リールにものすごく多くの画像が詰め込まれていたのに対し,今日のは1リールあたり半分程度だったこともあると思うのだが,とにかく昨日は2リール弱くらいしか見られなかったのに,今日はなんと5リール程度。残りは6リール。これはにわかに,札幌観光が実現性を帯びて参りました!タビハナ(買った)に載っていたすすきののバーとか,行っちゃおうかしら!
しかしこれほど1日中座りづめだと腰が痛い。おまけにマイクロリーダーを扱う手さばきはますます華麗になり,パチプロというよりも,デートで助手席に手をまわしてスマートにバック駐車する男性のよう。これでは北の殿方どころか,北の女性の心をわしづかみにしてしまうかもしれない。

パターン1

座りづめになってPCのディスプレイを熱心に見つめる私を熱心に見つめる青年。やがて意を決して近づいてくる。「あの……」「あの,いや,えっと,おのが身は云々」「えっ?いや,あなたに苔が生えています」

パターン2

華麗な手さばきでマイクロを操作する私をうっとりと見つめる少女。やがて意を決して近づいてくる。「あの,あの,お友達になってください!」「えっ,あのその,おのが身はそちらの国のものにはあらず,ストレートのものなり」

さて,今日の穂村弘。『本当はちがうんだ日記』58-9頁より。

本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)
私は女の子とキスをするとき,「好き?」とか訊かれたりするのが嫌で,性欲だけのキスがしたいのだが,その瞬間に,む,これで「負」のスタンプが一個か,とちょっと不安になる。内心びびりながらも,スタンプ帳なんて本当にはあるもんか,仮にあったところで女の子だって楽しむんだからおあいこだ,と舌を絡める。<中略>性欲だけのキスを何度も繰り返して,これが「負」ならもう随分スタンプがたまったはずだけど,別になんにも起きないぞ,と思ってほっとしていた私は,最近の自分の写真を眺めていて,怖ろしいことに気がついた。笑顔が醜いのである。

スタンプがどうのこうのというのは本書を読んでいただくとして,うーわー,聞いてしまった。それは,たぶん,世の女性たちすべてが知りたくなかったことではなかろうか。いや,頭ではうすうすわかっていつつも,絶対に確信したくなかったことではなかろうか。男性の口から聞きたくなかったことではなかろうか。キスするときに「好き?」とか訊かれるのは「困る」を通り越して「嫌」なのか。そして「性欲だけのセックス」ならまだしも,「性欲だけのキス」って。「だけ」って。しかも「性欲だけのキス」が「したい」って。結果的に性欲だけになるのならまだわかるが。まだ納得もいくが。しかも穂村さん,この少し後で「性欲だけのキス」のことを「性欲キス」と略称なさいました。もうダメです。ああ,これで例えば友人が,グレーな関係にある男性とキスをしてしまい,しかし付き合っている状態にはないなどの事情で悩んでいたりするとき,その相談に乗っていたりするとき,「あのキスは何だったの」などと泣いていたりするとき,わたしはいちいちこの一節を脳裏に浮かべることになるだろう。ああ。しかしわたしは穂村さんに幻滅するどころか,ますます好きになってしまいました。