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講演の耐えられない重さ

勉強

セント・アンドルーズ大学から招聘されている先生の講演会があったので,疲れが抜けきっていない体をむりやり起こすようにして青学へ行ってきた。
言語とナショナリズムに関するもので,わたしにとっては研究テーマど真ん中のものではあったのだが,疲れが取れていない状態で聞くものではなかった……。今日は理論のお話だったのでただでさえついていくのが難しいのに加え,4時間の予定時間をフルに使う恐ろしい講演会であった。講演資料を事前に入手できるというので申し込んだ時,57ページ(!)ものパワーポイント原稿が送られてきた時点で,こ,これはちょっとまずいぞ,とは思ったのだが。なにが恐ろしいって,先生は昨日も3時間の講演をなさっているということである。3時間や4時間って,バレエやオペラを全幕,あるいは『ロ短調ミサ』とかの世界ですよね……それをおひとりで。しかも講演会場の会議室は凍てつく寒さであり,雪山で遭難する気分になった。寒さの中でだんだん意識が遠のいてゆくのは結構心地よいですね。

春過ぎて夏きにけらし白妙の衣ほすてふ天香具山(持統天皇

今日は夏きにけらし,などと他人事のように言っていられないような暑さでありました。しかしながらこの歌は,特に技巧的に凝っているわけでもなければ情景と思ったことをそのまま詠んでいるだけなのに,心をとらえますね。はじめて読んだ時から思っていることだが。展望台というか高台から見渡しているようなパノラマと色彩のコントラストがぱっと浮かぶのがすばらしい。天香具山の後ろには入道雲でもあってほしいですね。最新刊の角川『短歌』を立ち読みしたら,巻頭に載っていたのが天香具山グラビアとこの歌でした。

いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな(伊勢大輔

季節外れですけども。この歌は少し技巧を使っているが,それにしてもありのままを詠んだだけでこの華やかさ。「八重」と「九重」の巧みな織り込みに,これまたはじめて読んだ時驚いた記憶がある。なんでもこれは作者伊勢大輔の「デビュー作」だったようです。宮中がどよめいたという。

カーテンに遮光の重さ くちづけを終えてくずれた雲を見ている(大森静佳)

第56回角川短歌賞受賞者大森静佳さんの作品。特に明記はされてないけれど,なんとなく夏を感じる。「遮光の重さ」とか「くずれた雲」とか。21歳にしてこんな気だるい脆さを表せるのはすごい。それでいて枯れている風でもない。わたしだったらきっともっとキャピキャピした歌になっていただろう。大森さんはなんと岡山県出身だそうです。高校はどちらなのかしら。京大だから自ずと絞られてくるけれど。と思ったら普通に出てきました。rising sunか。うーむ。まぁ我が母校fragrant fountainでは絶対にないだろうな,とは思っていたのですが。なんというか,この感性。うちの学校にはいない。