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おやすみプンプン

読書

おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)

おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)

1年前くらいから徐々に評判を耳にし始め,ついに読んだ。この間の『情熱大陸』を見て俄然気になり始めたという理由に依るのだが。浅野いにお,『ソラニン』を読んだ時はあまり好意的な印象を持てず(なんだか理屈ばかりこねていて自己満足っぽい世界に思えた),だからこれも評価の高さを知りつつ放置していたのだが,いざ読んでみるとこちらはとてもよかった。理屈ばかりこねているのは相変わらずだが,それが浅野さんの作風なのだから仕方ない。
実験的とか前衛的とか言われてはいるが,物語は非常に古典的な作り。鳥の落書きのような形で描かれるプンプンやその家族は「読者がより感情移入しやすいよう」そのような形にしたとのことだが,その試みは見事に成功している。すごく表現力に富んだ漫画家なのだと思う。うらやましい限り。現代を生きる若者の虚無感や諦念という浅野さんお得意の世界観は,こうした「一見」Bildungsroman的な作品でとても活きていると思うし,それが『ソラニン』と今回の大きな違いなのではなかろうかと思う(『ソラニン』は結構ありきたりな若者ワールドであったように思えた)。プンプンの半生を小学生時代から青年期まで丹念に追い,プンプンはその過程で恋だの何だのを一通り体験するが,しかしそれは「精神形成」の物語かと言えばまったくそうではない。淡々とした日常の中で,よくて現状維持,悪くすればマイナスのことが起こり,感情の起伏も特にないまま粛々と生きていく。こういう世界を上手に描ける人って,少なくとも私の知る限り,この浅野さんくらいしかいないのではと思われる(古谷実はちょっとやりすぎ感があってあまり好きでない)。
物語は9巻の最後で大きな節目を迎えたようである。プンプンを取り巻く世界も,プンプンとはあまり関係ないところで展開しつつ,世紀末的な要素が見えつつあるのも気になる。
世界の終わりと夜明け前 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

世界の終わりと夜明け前 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

ついでにこれも読んだ。漫画の短編集ってあまり読まないが,こちらもとてもよかった。