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平均律第1巻/キース・ジャレット

音楽

最近の私の生活を彩った音楽,アデルを紹介するのであれば,こちらも忘れてはならない。

バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻

バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻

おやすみプンプン』はいつも通り実家近くのTSUTAYAでレンタルしたのだが,9巻だけレンタルされていて,しかも長らく返ってこなかった。いつ返ってくるかとレジで尋ね,返却予定日には2回も見に行き,挙げ句閉店間際に電話で問い合わせまでして,やっと返ってきたことが確認されるや「すぐ行きますっ」と車を走らせ,……そこまでしたのに,店頭でいざ9巻を手に取った時,にわかに「これをどれだけ待っていたんだと呆れられるのが恥ずかしい」という自意識が芽生えたのである。これだけ借りにきたと思われたくない。そう思った私はおもむろにレンタルCDの,しかもクラシックの棚に向かい,このアルバムを選んだのであった。「これだけを借りにきたと思われたくない」「楽しみにしていると思われたくない」とのいわば「臆病な自尊心」によってカムフラージュ的なものを添えてレンタル,考えてみれば殿方がアダルトな感じのものを借りる時のお作法である。
奏者は,その店舗では2人であった。1人はグレン=グールド,そしてもう1人がこのキース・ジャレットであった。なぜ後者を選んだか。理由は大まかにわけて2つである。1つは純粋に,キース・ジャレットの弾く平均律に興味があったこと。そしてもう1つは,「グールドとキース・ジャレットがあって,どちらかといえば(ゴールドベルクなどの名盤により)バッハ=グールドの印象が強いところ,敢えてキース・ジャレットを選ぶ私」にクラッとしたことである。クラッ。かくして私は,『おやすみプンプン』にキース・ジャレット版『平均律』をまぶして意気揚々とレジに向かったのである。二重にも三重にも恥ずかしい人間であったことは間違いないだろう。
前置きが長くなったが,このようにして大変大変不純な動機でレンタルしたキース・ジャレット版『平均律』,すぐに車のオーディオで聴いてみたのだが,すごくよかった。「バッハはスイングする」と語っていたのはアルゲリッチであったが,ジャズとバッハはやはり親和性があるのかも,とジャズど素人の私も思わせられた。そういう書き方をするとバッハをアレンジして弾いているような印象になってしまうかもしれないが,それどころか弾き方はいたって正攻法,楽譜が浮かんでくるほどである。なのになんでしょうね,この渋さと色彩といったら。BGMにも鑑賞対象にもなり得てしまう。恐ろしい。
ところでこのアルバム,そのTSUTAYAには第1巻しか置かれていなかった。生殺し!! 2巻はいずこ!!