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時計はTick tack tick tack

今日のタイトルは『Everybody go』のカップリング『KISS FOR U』から。何かに追われているような緊迫感のある曲が好きなんです。たとえばスピッツの『夜を駆ける』とか宇多田の『Be my last』とか。歌詞も,「幸せな結末は待っていないかもしれないけれど,それでも今一緒にいたい」というような悲劇性(でも当人はそれを達観して受け止めている感じの)を秘めた感じが好き。別れは禁じ得ないけれど,でもそれをどうにかして遅らせようとしているような,でもその時は刻一刻と迫っている,というような。『夜を駆ける』はそういう意味で私にとって完璧な歌です。「似てない僕らは細い糸でつながっている よくある赤いやつじゃなく」「今は撃たないで」なんて,なかなか出てくる言葉ではない。マサムネさんやはり天才。

かたや『KISS FOR U』は,ひょっとして表面的に読めばただ彼女が会いたいと泣くので駆け出していく彼氏の歌なのかもしれないが,いやそんなことはないと信じる。この2人にはなにか自由に会うことのできないやむにやまれぬ理由があり,そのタブーを犯してでも会いたいと言って困らせたことについて彼女は泣きながら謝っているのであり,その愛おしさに矢も楯もたまらず彼氏は夜の街へ飛び出すのである。身の危険も顧みず。

もしなにか天変地異が起こって私がこの曲に着想を得た映画を撮ることがあるとすれば,ぜひ『4ヶ月、3週と2日』とか『ラスト、コーション』のような雰囲気のものを作りたい。独裁政権下で勾留された女性活動家と当局の兵士とかそういう2人を主人公に据えて。そして独裁政権にもいろいろあるが,ここはぜひナチスとかよりももっと生々しい,冷戦下の東側に舞台設定したいところです*1。要するに東欧ですね。それこそチャウシェスク政権下ルーマニアとかいいですね*2。東独もいいですけどね。「夜空に満天の星」とかの歌詞も,息の詰まりそうな現実世界で夜空だけが嘘のように美しいという意味で,そういう世界であれば映えてくれるのではないか。そして最後の「I just send my kiss」 はぜひ,その兵士が軍規に違反したかどで銃殺されるとき,目隠しをされた状態でつぶやいていただきたい。そして全体は,政権の崩壊後にその女性活動家がアメリカなりに亡命したという設定で,高齢となった彼女が回顧するという作り(枠構造)でどうでしょうか。

……さまざまな作品*3に題材を得ているのは否めないが,キスマイのしかもカップリング曲1曲でここまで作り上げられるなんて,手前味噌だが私の想像力もまだまだ捨てたもんじゃない。それがわかっただけでも今日はよしとしよう。本当はジェンダー論をやるようになってから自分に起こったささやかな意識の変化について書こうかなと思っていたのだが*4そんなのはもう,どうでもよくなってしまった。そういうわけでみなさま,どうぞ『KISS FOR U』を聴いてご覧になってください。キスマイは正統派の歌の売れ行きは安定しているようなので(まあジャニーズですしね),今後こういうシリアス路線というか,影のある感じの歌でギャップを演出するのもいいのではないかと思いますので。嵐で言うところの『truth』みたいな。だって率直に言って,デビューまで長かった彼らはもういい歳だし(と,キタミツ学年の私が言えることではないが)。

4ヶ月、3週と2日 デラックス版 [DVD]
 
 
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 ついでに言及した映画も。3年前,舞ちゃんが赴任していた上海に遊びに行く前に『ラスト、コーション』を見て(このときが初めてではなかったが)気分を盛り上げ,「トニー・レオンを籠絡できるようなチャイナドレスを誂えるのだ」とほざいていたことが思い出される。実際,2着も作ってしまったが未だにこれらは日の目を見ていない(当たり前である)。

*1:ただその場合,「ケイタイ越し 涙はぬぐえない」は捨象することになるが

*2:チャウシェスク政権瓦解寸前の危うさもあって,やっぱり『4ヶ月~』は素晴らしかった。

*3:たぶん,前述の『4ヶ月~』や『ラスト、コーション』に加え,『タイタニック』,『愛を読むひと』,それから『オルフェウスの窓

*4:なんだか最近,アクセス数が伸びているようなので,ちょっと面白いことでも書かなければと思いまして。こんなところにご足労いただき,本当にありがとうございます。