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僕は今日ひとつ失敗をしたんだ

なぜか最近,めっきめきとアクセス数が増えている模様である。検索ワードを見てみるとやっぱり「宮田俊哉」とかが上位に来ているので,そんなに私の日記はヒットしているだろうかと思って検索してみたら特にそんなこともない。これはいったいどういうことだろうか。TwitterにURLを載せているので,そこからのお客様もいらっしゃるかもしれないが,全体の比率としてはそんなに高くないようである。いったいぜんたいどうしたことなのか,ますます理由がわからないが,それにしてもこんな日記を読んでくださって大変うれしいです。書いてあるのはもう心象風景のようなもので,留学やらアイルランドやら研究やらジャニーズやら,しっかりテーマ設定して記述しているわけではないので大変恐縮ですが,少しでも楽しんでいただければ幸いに存じます。

さて,こんなことを書いてハードルを上げたので,何か面白いことを書かなければと思うのだが,イースター休暇が始まってみやっほーと大喜びしている女に,ドラマも変わったこともあろうはずがないのである。あ,ひとつあった。ジョギング中に前を自転車で走っていた小さな女の子がべしゃっと転倒したので,すかさず駆け寄って助け起こした。女の子の母親も駆け寄ってきたので,私は女の子に怪我などがないことを確かめてすぐ走り去ったのだが,別れ際にお礼を言われるのに対してわずかに振り返って微笑んでおいた。その際の(自分がこうであったらいいなと思う)イメージはこちら:

 <前略>お廊下の途中で,清顕がちょっとつまずいて,お裾はそのために,瞬間ではあったが,一方へ強く引かれた。妃殿下はかすかにお首をめぐらして,少しも咎める気持はないというしるしの,やさしい含み笑いを,失態を演じた少年のほうへお向けになった。

 

妃殿下は,それとわかるほどはっきりと振向かれたのではなかった。まっすぐに背筋を立てたまま,片頬の端だけを心持向けられて,そこに微笑をちらと刻んでおみせになったのである。そのとき,屹立する白い頬のかたえに,ほのかに鬢の毛が流れ,切れ長のおん目のはじに,黒い一点のきらめく火のような微笑が点じられ,形のよいお鼻筋は,何事もなくそのかなたに清く秀でているさま,……こういう妃殿下の,横顔とさえ云えぬ角度の一瞬のお顔のひらめきが,何かの清い結晶の断面を,斜めに透かし見るときに,ほんの一刹那ゆらめいてみえる虹のように感じられた。 *1

何度もしつこく引用します。『春の雪』。私にとっての女性の美しさの理想はすべてこの1冊に詰まっていると言って過言ではない。こちらは少年清顕が春日宮妃のお裾持ちという大役を仰せつかったときの場面。しかしこの部分,引用しながら思ったけど,耽美的といえば聞こえはいいが,結構記述が濃厚ですね。女性の振り向き方をこんなに熱く語った人はいるだろうか。いや,谷崎とか田山花袋あたりやりそうだ。しかもこれは13歳の少年の心に残った風景なのである。しかし,これを初めて読んだ時,私は13歳の清顕少年と同じくらい呆けたのであります。田園都市線の中で*2。それからというもの,なんらかの用事で振り向く必要があるときは,常にこの「春日宮妃の振り向き方」を心がけております。

……なんか結構今日の日記はムッツリ感が漂っているけれども,大丈夫だろうか。ええい公開!

*1:

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

 13-14頁。

*2:買ったのがあざみ野のブックオフだったので。