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Mechanics' institute

そろそろ国会図書館メルマガに載せていただいている論文紹介の原稿依頼が来そうなので,ぼちぼち最新の図書館史論文を探して読んでいるのだが,今回選んだ論文のポイントのひとつであるMechanics' instituteをどのように和訳すべきか考えあぐねている。今のところ最有力候補は「職工学校」なのだが,なんかこう言うと職工すべからく通わねばならない学校のようにも聞こえる。Mechanics' instituteって,今の言葉で言う「意識高い系」の職工というか職人たち(つまりメカニックたち)が「自分磨き」のために通う寺子屋のようなもんで,教えられる内容も別に鋸の扱い方とか横尾渉講師による「あなたにもできる簡単DIY:第1回・すのこの切り方(全10回)」とか(すみません)そういうものじゃなくて,外国語とかである。公共善の思想のもと,またワーキング・クラスの自助/互助のために作られたものとして,また公共図書館の前身として図書館史上非常に重要なものである。

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この写真はリムリックに行ったときに見つけたMechanics' instituteの看板。"Labor Omnia Vincet[sic]*1"の標語も輝いています。

で,日本語訳を考えるにあたり,最初にやらなければならないことは,当たり前だが定訳がないかどうか調べることである。とりあえず「Mechanics' institute 日本語」とかで検索してみたのだが,面白いことにヒットしたのがロンドン大学のWikipediaページ。バークベック・カレッジについて以下のような記述がある。

例えば、バークベック・カレッジはその前身がロンドン職工組合(London Mechanics' Institute)であったこともあり社会人のためのpart-timeコースが多く、<後略> 

 うーん,「職工組合」は違うような気がする。たぶん互助組織としての役割を前面に出したかったのだと思うが,やっぱりMechanics' instituteの役割と言うのは第一義的に職工の(自主的な)教育であるはずで,それを考えるとやっぱり「職工学校」になるだろうか。「しょっこうがっこう」って,語感はあまりよくないのだが。

でもバークベックがMechanics' instituteの後身だということも社会人のためのパートタイムコースが多いということも恥ずかしながら初めて知ったが,これはなかなか面白い事実だと思う。これこそ,科学史⋂都市史みたいなところじゃないだろうか。たぶん今回の原稿には間に合わなさそうだが,バークベックでなくてもこういう公共図書館→大学という進化の仕方というのは掘り下げる価値が大いにありそうである。

さて,この日記を書いて憂鬱なことがひとつだけある。おそらく次回私が「Mechanics' institute 日本語」と検索するとき,ヒットするのがこの記事になるであろうことである。何かずっと気になっていることを調べたい時,検索して自分の日記がヒットする虚しさといったらない(過去数回経験がある)。

*1:en: Work conquers all