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宙組『風と共に去りぬ』・『モンテ・クリスト伯』

帰宅して同居人きゃりーとワイン飲みつつご飯食べつつ,きゃりーのお母様が持ってきてくださった宙組の『風と共に去りぬ』をいつ観るかという話になり,勢いで観てしまった。

最近の宝塚でよくやる「男役が娘役を演じる」というものすごくややこしいパターンで,今回は朝夏まなとがスカーレットを,緒月遠麻が娼館の女将ベルを演じるというバージョンだった。この「そもそも女性が男役を演じていること自体が異性装なのに,その『普段(舞台で)男としてふるまっている』女性が娘役をやる」という360℃回って帰ってくる世界,私は観たことがなかったのでどういう感じなのかとても興味があったのだが,まずこれについては今回成功だった気がする。最初,朝夏スカーレットはずいぶん男役声で歌うもんだなと思っていたが,宝塚では「高い発声」を娘役の象徴にしているところもあるし,「男勝り」の女スカーレットを演じるなら少々低めでも問題ない気がした。緒月ベルについても,ベルは商売柄保守的な南部の人々に除け者にされながらも,心は他の人と何ら変わらない誇り高い南部女であるというキャラクターなので,緒月遠麻が普段男役で演じているキャラクターと性質的にそう大差がない。こういう風に「型破りな女」を表現するのに敢えて男役を配役するというのはとても納得できる気がした。

むしろ,この舞台の解釈に私は疑問を覚えた。南部がものすごく遅れた考えを持っているということについて,やや露骨に誇張して描くのはまあ舞台だから仕方ないとして*1,なんだかスカーレットがただの空回りしがちな頭の軽い女のような印象さえ受ける。対比してものすごく素晴らしく描かれているのはメラニーで,この配役も娘役トップの実咲凛音なのだが,つまり宝塚がフォーカスしたいのは凰稀かなめのレット・バトラーとこのメラニーなのだなということが透けて見える。メラニーって,確かに芯が強いところはあるが,映画ではもっとやたらとスカーレットを無邪気に頼ってくる「天然」系の若干鬱陶しい幼馴染みで,根はいい奴であるスカーレットはメラニーを好きでもなんでもないがなんとなく見離すこともできなくて面倒臭がりながら世話しているというような感じだったのだが,なんだかこの舞台版ではメラニーの「良妻賢母(母にはなれないのだが)」っぷりに焦点が当てられていたのが不満だった。あと,余計な演出が多い。一部からすでに,この映画のクライマックスであるところの「明日考えよう」を,しかも歌にして言ってしまうし,レットは露悪ぶってふるまいながらも余計なことを言わないのがいいところなのに,スカーレットと別れた後などに「スカーレット,君なら一人で生きていける」とか無駄な独白を入れて情緒をぶち壊している印象があった。あと肝心の「明日考えよう」はセリフにはなかった。そのため「え,終わり?」という印象ばかりが残る。

というわけで,あまりにこの『風と共に去りぬ』は楽しみにしていたのにも関わらず不完全燃焼であり,急遽「もう一本観ようぜ」となった(もはや悪ノリ)。で,きゃりーおすすめの『モンテ・クリスト伯』を観ることに。これもなんというか実験的な作品で,普通に『モンテ・クリスト伯』が始まるのかと思いきや,いきなり途中でアメリカ?の演劇部の高校生たちが現れる。どうやら彼らは『モンテ・クリスト伯』を上演する予定なのだが,いまいち物語に入り込めていない様子。そのため,顧問の先生と一緒に『モンテ・クリスト伯』がどういう物語なのか考えていくということで,つまりこの『モンテ・クリスト伯』の劇自体が劇中劇であるという設定なのだが,最初この「狂言回し」であるところの高校生集団にだいぶ戸惑う。しばらく観ていて,このデュマの大作を1時間半の舞台におさめるためにこうして「適宜説明という形で省きながら要点だけを述べていく」スタイルにしたのかな,とも思えたが。それにしても彼らも出てきたり出てこなかったりで,なんとなく中途半端なようにも思えた。

ただこちらは物語に引き込まれて観ることができたので,おそらく作りがとてもうまかったのだと思う。『モンテ・クリスト伯』の世界観がそもそも宝塚に合わない気がして不思議だったのだが,観てみるとそんなこともなかった。男役を悪役で堪能できるというのはこの作品の醍醐味かもしれない。他,たとえば『八十日間世界一周』とか『影をなくした男』とか,どうですかね。結構舞台映えするような気がする。あと歌がなんだか中毒性があり,観終わった後シャワーを浴びながら「エードモーンダンテス,エードモーンダンテス」と口ずさんでしまった。フェルナン他三悪人の歌う「俺はダンテス許さない♪」「俺もダンテス許さない♪」「俺もダンテス許さない♪」もなかなか見どころである。ダンテス,能天気な割に(いや,だからだと思うが)敵が多い。

ちなみに全然話は変わるのだが,昔からジャニーズには『蠅の王』を演じてほしいと思っています。せっかく10代の美少年がいっぱいいるんだし!やりましょうよ!極限状態で芽生える獣性と狂気とかサイコーじゃないか!あと漂流モノだから上半身くらいは裸にもなれるし(ことわっておきますが,私自身は男の裸にまったく興味がありません)!青山劇場とかにルンルン集まってきたジャニオタたちが3時間後ものすごくどんよりして出てくるのとか,見ものですよ絶対! 

蠅の王 (新潮文庫)

蠅の王 (新潮文庫)

 

 

*1:女は戦争のことなんて知らなくていいとか,チャリティバザーの場で女性と踊りたければその人に入札してほしいとか,そんな感じで。これ観てると南部はえらく酷いところで,南部に命を賭してまで誇るべきものがあるのかわからなくなってくる。