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The Imitation Game


The Imitation Game - NEW Official UK Trailer - YouTube

日記を書いていなかった間何をしていたかというと,1週間に2回も『イミテーション・ゲーム』を見ていました。第二次大戦中,ナチスドイツが用いていた暗号機「エニグマ」の暗号解読に成功した天才数学者にしてコンピュータ・サイエンスの祖,アラン・チューリングの物語。

これ,本当に,すごくいいから,みなさまぜひご覧ください。

たぶんもう1回くらい見る気がするし,DVDも絶対買う。描き足りないところやちょっと物足りないところはあるし,戦争と知識人の関わり方という点では『ハンナ・アーレント』に遠く及ばないけれども,アラン・チューリングをむやみにヒーローとして描かないところや作品全体の作りも割と淡々としている(音楽だけがドラマチック)ところなど,とても好感が持てました。『英国王のスピーチ』もそうだったけれど,第二次大戦を描いた映画だったらイギリスものが一番好きな気がする。

個人的に面白いと思ったのは,チューリングの言葉に対する感覚がきちんと描かれていた点(もっと掘り下げてもいいんじゃないかと思ったが)。チューリング自閉症だったので,言葉を「文字通り」にしか受け取れない*1。つまりチューリングにとっては,普段の会話そのものが一種の暗号なのである。セリフでもそんな旨のことを言っていた通り,ある言葉を使うとき,誰もが同じ意味でその言葉を使うわけではないということをちゃんと理解している。そんな風にコミュニケーションの難しさを人一倍理解している彼がエニグマを解読してディスコミュニケーション状態を解決するというのは,とても面白くまたシンボリックだと思った。しかし,だからこそ,同性愛で逮捕されたチューリングが刑事相手にかっこよく自分のことを語るシーンはちょっと余計だったかも。「私は英雄か?それとも犯罪者か?」なんて,こんなに言語能力に難ありの方は普通言えないでしょう。

で,今日は勝手に,誰が求めているのかわからないチューリングベネディクト・カンバーバッチ演)の胸キュンポイントを挙げていこうと思うのである。チューリングは天才数学者だが,前述したとおり人とうまくコミュニケーションが取れず,しかもそれを開き直っているので割とダメダメである。こんな「ポンコツ天才」はまさに私の大好物だが,世の中に何人いるのかわからない同じ特殊性癖の方々に向けて披瀝する次第である。

  1. 「ランチ行くけど」にまったく反応しないチューリング
  2.  自らリクルートしたジョーンが到着した時に笑顔で手を振るチューリング
  3. エニグマ解読にはできるだけの協力が必要,チームのみんなに嫌われていたら彼らはあなたを手伝わないわ,というジョーンの助言を受け,唐突にチームにリンゴを配るチューリング
  4. 「25で独身で親も心配してるし,実家に戻るわ」と言うジョーンに「論理的に考えて」君に夫がいればいいんだろう,という理由からプロポーズするチューリング
  5. ポケット漁って出てきた針金を巻いて婚約指輪にするチューリング
  6. そんなザマなのにも関わらずプロポーズするときはちゃんと跪くチューリング

今思い出しただけでこの通り。つまり,畢竟するところ,ポンコツ天才が好きでたまらん。「ランチ行くけど」に反応しないなんて,自閉症でなくても男性研究者にはゴロゴロいそうである。チームの人間なんてみんな見下していたくせに,ジョーンに言われた途端に慌ててリンゴ配ったりする素直さもかわいい。そしてなんといってもこのダメダメなプロポーズ。これは別に照れとかでもなんでもなくて,ただ単にチューリングは同性愛者なので本音を言っているだけなのだが,私自身プロポーズなんて夜景の見えるところでロマンチックにしてほしくなんてさらさらない人間なので(むしろ不器用な方が一生懸命で好感が持てる),このプロポーズははっきり言って,理想でした。ただし,指輪は後から買ってほしいけど。

それにしても気の毒なのはジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ演)である。高学歴,オールドミス(当時の基準で),おい,絶対に君も私の仲間だろう?つまりポンコツ天才は大好物だろう?しかもこんなに気をもたせることばかりやられておいて,結局チューリングは同性愛者である。自分が同性愛者であることを告げて婚約を解消しようとした時,「そんなの構わない」と即答した彼女の気持ちはもう痛いほどよくわかる。知的魅力は性的魅力をいとも簡単に凌駕してしまったりするから恐ろしいのだ。特に高学歴独身女性に対してだと。ああ,涙が出る。ODNBの記述を見てみると,婚約を解消した後もクラーク女史はチューリングと生涯友人関係を続けたらしい。なんていいやつなんだ,ジョーン。しかし確かに,知的交流って一回の色恋で棒に振るには惜しすぎるのですよね。恋人には代わりがいても,本当に知的交流ができる人って本当に少ない。研究者同士でも少ない。チューリングとジョーンは,どういう結果であれ,これもまたひとつの「運命の相手」だったんだろう。

ところで,見終わった後にWikipediaで一生懸命勉強してみたのだが,エニグマの構造・および解読の方法(映画で描かれていたようなのとは違う)が何度読んでもさっぱりわからない。換字式?どなたか,これ,教えてもらえないかなぁ……コーヒーおごるから……なんだったらケーキもつけるから……

*1:作中でも出てきたが,同僚が「昼食べに行くけど」と言っても,それが言外に自分を誘っているということが理解できない。「昼食べに行くけど,一緒にどう?」と言われて初めて理解する。