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La vie en Asian market in Dublin

2012年にこちらに来て驚いたことはたくさんあったが,豚肉の薄切りが手に入りにくいというのはその中でもベスト5くらいには入るであろう衝撃だった。だって豚細切れ肉は日本での私のタンパク源だったのだ。ポークチョップにするようなソテー用の肉か,または角煮に使うような塊はあるけれども,薄切りがない。これがないだけでレパートリーがかなり減ったのだから,いかに私が日本で豚細切れ肉に依存していたかがおわかりいただけようかというものである。あと使いやすい肉と言えば鶏もも肉があるだろうが,骨のついていない鶏もも肉(つまり,日本で売られているのと同じような形状)が売り出されたのは,私がこちらに来てから半年くらいしてからだった。あの時は在愛日本人女性の間でちょっとしたニュースになったものである。というわけで鶏もも肉も使おうと思えば使えるが,日本に比べて割高なので,私にとっては完全に高級食材と化してしまった。鶏もも肉はちょっとした自分へのご褒美である。クロエやらフルラやら買わないのよ。

しかし薄切りの豚肉が手に入るところも,少数ではあるが,ちゃんとあるにはある。在外日本人の心の支え,アジアンマーケット*1である。あとはコリアンマーケット。こういうところにあるならさっさと赴いて買えばいいのだが,これらで豚肉が手に入ることを知ったころにはすでに私は薄切りの豚肉に依存しない食生活を構築しており,結局デビューしたのはこちらに来てから2年半が過ぎた最近のことであった。

そして,あったらあったでやはり薄切りの豚肉は便利なものである。デビューして1か月も経たないうちに,私はまたしても薄切りの豚肉に依存する生活に舞い戻ってしまった。豚が切れそうになるとおろおろし始める。もはや完全なる豚中毒,略して豚中である。最近院生室で勉強して帰ってくるようになったのもあるかもしれないが,夜帰って来てから改めて料理をしようなどという気にとてもならないのだ。そういう時に豚があれば,白菜とか青梗菜とか適当な野菜と煮るだけで立派な鍋になるでしょ。消化にもいいでしょ。ヘルシーでしょ。かくして今の私の生活に,薄切りの豚肉は欠かせないものになってしまった。

ところがジャンキーへの供給は長く続かなかった(これこそがジャンキーをより強く繋ぎ止める鍵である)。2日前くらいに薄切り豚肉が切れ,私は学校帰りにアジアンマーケットに赴いたのだが,そこに残っていたのは薄切りの牛肉とラム肉だけだった。豚が,豚が欲しいのに。しかしないものは仕方ないので,もしかしたらこれもおいしいかもしれないし,ラム好きだし,と私は薄切りラム肉を買って帰ったのである。そしていつも通り鍋ものにしてみた。しかしこのラム肉が,結構なラム臭を放つ。ラムが好きな私の鼻につくほどなのだからよっぽどである。私は大量の薄切りラム肉を抱えて途方に暮れることになってしまった。神はなぜこのような試練を与えたもうのか。でも,もしかしたらあの時ちょうど品切れだっただけで,今日はあるかもしれない。そう思って今日も学校帰りにアジアンマーケットに赴いたのだが,なぜか大量の薄切りラム肉が入荷されており,やはり薄切り豚肉はなかった。薄切り牛肉さえもなかった。ラム,ラム,ラム,なんでなの。今年が未年だからなの。中国の干支でも今年は未年なの。

こういうわけで,ここ最近の私は身も心もアジアンマーケットに支配されている。19時閉店なので,執筆を切り上げて帰るにはちょっと早い時間に院生室を出なければならないのが恨めしい。しかし明日もおそらく,アジアンマーケットに行くことになるだろう。豚,あればいいのだが。それでなければもう別のアジアンマーケットに行くか,コリアンマーケットに行くか,どちらか考えなければ。

考えなければならないことはもうひとつある。大量の薄切りラム肉をどうするか。思いつくのはラムしゃぶかジンギスカンだが,毎日ラムしゃぶやジンギスカン食べるわけにもいかない。そこへ差し込んだ一抹の希望の光,トムヤムそうめん。*2レシピは豚肉になっているが,トムヤムクンほどの香辛料の量なら,もしかしてラム臭をごまかしてくれるかもしれない。

というわけでさっそく買ってきたのがこれ,トムヤムペースト。ちなみにこれももちろん,アジアンマーケットで買いました。やはり身も心もアジアンマーケットに支配されている。

*1:これを「日本食スーパー」とか言う人たちはロンドンやらパリやらベルリンやらつまりは日本人人口の多い大都市に住んでいる人たちなので,そこに厳然たる階級差がある。

*2:こちらの「メ・シ・ウ・マ・イbot」はキスマイファンの方がやってらっしゃるアカウントなのだが(キスマイの曲『キ・ス・ウ・マ・イ~Kiss your mind~』からアカウント名がつけられている),手軽なアイデアレシピが満載なので,キスマイファンに限らず万民にお勧めです。キスマイファンの方がやってらっしゃるというだけで,キスマイの話題は全くと言っていいほど出てきません。さあみんなフォローしよう!