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踊り場の恐怖など

海外でシェアハウス生活と言うと,多くの人から羨ましがられる。たいてい『フレンズ』とかの海外ドラマやら,最近では『テラスハウス』を連想するらしい。

そんなわけねえだろ。

乱暴な言葉を使って失礼いたしました。しかしオシャレな家で愉快なハウスメイトと楽しく談笑し,時に悩みを語らいながら夢の海外ライフ,ってそんなことばかり起こるはずもない(もちろん,そんなこと「も」ありますが)。まして私は8年も一人暮らしをしてきた身であって,もはや誰かと生活を共にするのには一段階努力が必要な身になってしまった。しかも私の部屋はみんなが集まるダイニングに接しているから,時にやかましいことこの上ない。ただでさえ疲れて人と顔を合わせたくない時もあるのに,そんな時にけたたましい笑い声など聞こえたら,過言ではなく殺意に似た感情が湧くことも少なくない。物は増えるし,仕事の分担も不公平になりがち。シェアハウスというのは,そこにカメラでも入らない限り,基本的にこうした殺伐とした世界です。覚えておいてください。

そんな環境で過ごしてきたこともあって,この前から与えられた院生室は私の行き着いたユートピアであった。長い学生生活の中で,家以外の場所で勉強が捗った試しがほぼなかったため,それほど期待もしていなかったのだが,居心地がいい。ひとりひとりに割り当てられた机は大きいし,プリンターも無料で使えるし,何より暖かい。冬に着込まずに過ごすことができているのは,ダブリンに来て初めてじゃないかと思う。着込まないし暖かいから,肩が凝らない。給湯室まで使える。こちらに戻ったのが1月18日の夜で,院生室に初めて行ってみたのは20日だったのだが,それから今日にいたるまで実にほぼ2週間,土日すら休まずに通っている。

ただ今日は後藤さん殺害の余韻で,院生室から帰る時がやたらと怖かった。*1いや,別に,私は何もやってないし,もっと言えば名もないただの院生なのだが,やたらと『悪魔の詩』の事件が頭をよぎって,階段の踊り場とか妙に警戒してしまった。だって「どこであろうと日本国民が発見されれば殺戮を続ける」と言っているわけだし。怖い時代になってしまった。事態が早く収まってくれればいいのに,と心底思っているが,そうもいきそうにない。治安のいい街ダブリンでほぼ3年過ごして,危険を感じたことは今まで一度もなかったのだが,いきなり一抹の恐怖を感じるようになってしまった。平穏な日常というのはこうして変わっていくのですね。本当に,こんなことが早く終わりますように。

*1:院生室自体は学生証をスワイプしなければ入れない仕組みになっているので,比較的安全。