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damaged

破綻は急に始まるのではなくて,そうと気づく前からすでに始まっているのだ,とアーサー・ミラーは『代価』の中で述べていたが,日常生活でそれを実感するのって,何と言ってもものが壊れた時である。卑近な例でごめん,マリリンのご主人。でもものが壊れる時というのは2種類あって,本当に晴天の霹靂のようにいきなり壊れる時と,騙し騙し使っていたら当然の帰結として壊れる時がある。自分を許せないのはもちろん後者である。今日は2つ,ものが壊れた。ものが壊れる時というのはどうしてこう重なるのだろう。

まず,朝,スマホにいきなり「damaged SD card」との表示が出た。しばらく前からなぜかSDカードを読み込んでいないようだとは思っていたが,接触が悪いとかたぶんそんなことだろうと思って放置していた。するとついにこのサインが表れて,フォーマットしろしろとうるさい。あまりにうるさいのでSDカードを抜いた。で,アダプターにつないでPCで確認してみたら,*1やはり認識されない。いや,SDカードが入ったというところまでは認識されるようなのだが,SDカードを選んでもエラーのような表示が出る。調べてみたら,無料のデータ復旧ソフトでも復旧される可能性が高いとのことであった。でも,やったことないからなぁ。どういうソフトがいいとか,どういうことに気をつけた方がいいとか,ご存知の方はご教示願えますと幸甚です。ちなみにSDカードには,一般的に見て重要なものはなにひとつ入っていなくて,職場の女子職員会でタオルを振り回して大暴れする祖母の写真とか,私が飼い犬に思いっきり手を噛まれている写真とか,要するにそういう一族の恥となるような写真ばかりが記録されています。でもいいじゃないですか。小市民にはこういうものが大切なのですよ。

それから今日は霜が降りて水には氷が張るほどの寒さだったのに,このバカみたいに寒いときに,ダウンコートの,私が持っている衣類の中で最も暖かいものであるダウンコートのファスナーが壊れた。みなさまにはありませんか,ファスナーを閉めているつもりなのに下から徐々に開いてくるご経験が。これも前から何度かあったのだが,私の閉め方が悪いのだろうと思って閉め直してその場を凌いできた。しかしいよいよ何度やっても閉まらなくなったので,通学路の途中にあるクリーニング屋さんが確か修理もやっていたことを思い出し,そこに行ってみた。東欧訛りのように聞こえる英語を話す店員のお兄さんはとても親切で,ファスナー*2が壊れたんですけど,と相談してみると, よく見てみないとわからないけど,ヘッド(動かす部分)が緩んでいるだけの可能性もあって,その時は工具で締めるだけで済むからお金はいらないよと言ってくれた。しかも,木曜日には仕上がっているらしい。なんと迅速。名前と電話番号を言うと,店を出るときに"See you, Mai"とさっそく名前を言ってくれた。海外で物を壊すというのは海外で体を壊すのに劣らず避けたいことだが,こうしてちょっとした親切に触れるだけで心が安らぐものである。留学生をたぶらかすのなんて簡単です。

しかし壊れて直るものならまあいいが,今の私にとって死守しなければならないのは何といってもデータである。多くの文系学生の例に漏れず,私もすぐにデスクトップにいろんなものを保存している。*3絶対にやらないと思っていた「水没」をやらかし,挙げ句そのPCが輸送途中に盗まれるという事件が発生してから早くも1年が経とうとしているが,バックアップ,取りませんとね。路地裏でカバンをひったくられ,フルマラソンを完走する健脚で追いかけてもみ合った末に取り返したメアリーも"Do backup"と説いていたし(ただし,この説にはなにか根本的な違和感を感じた)。

ところで,また残忍な殺人が行われたとのニュースが入ってきた。この前に引き続いて,やるせない思いでいっぱいである。しかも,もっと前に行われていた可能性もあるとの話もあって本当に信じられない。「同じ人間がこんなことをするなんて」という声が多かったようだが,むしろ私は,「同じ人間がこんなことを考えつくなんて」というショックを感じる。人間の想像力というのは,本当に素晴らしいものだと思っているのだが。

*1:考えてみれば買ってからというもの,この作業自体やっていなかった気がする。

*2:「チャック」と言わないようにだけ細心の注意を払ったが,そもそも「ファスナー」ですらなくてthe zipと言うらしかった。「ジッパー」の方ですね。

*3:そしてこの興味深い文系学生の習性に,理系のみなさまは卒倒する。でもクラウドなんて信じられない。