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NEWS LIVE TOUR 2012 ~美しい恋にするよ~

 「美しい恋にするよ」と彼らは言った。そしてそれは本当に,美しい恋だった。

NEWS LIVE TOUR 2012 ~美しい恋にするよ~(通常盤) [DVD]

NEWS LIVE TOUR 2012 ~美しい恋にするよ~(通常盤) [DVD]

 

 これはNEWSが4人体制になってからの初めてのライブツアーである。*1嵐に次ぐバレーボールユニットとして華々しくデビューしたNEWSは,KAT-TUNに勝るとも劣らない苦渋を舐めている。最初9人だったのが,8人になり7人になり6人になり,それからさらに山下智久錦戸亮の両名が脱退して4人になった。特にこの2人の脱退の衝撃は大きく,ジャニーズファンを含めた多くの人が「もうNEWSは終わった」と嘲笑交じりに話していた。私は嘲笑はしなかった。むしろ嘲笑する人に,そして脱退した2人に腹を立てた。しかしそれはおそらく,残された4人への同情から来るものであって,失礼さの度合いで言えば嘲笑した人々と何ら変わりはなかった。私はNEWSでは小山慶一郎のファンである。しかし私も無意識に,小山慶一郎を含めた「残った4人」のことを心配していた。山下智久錦戸亮「ツートップ」の存在は,それほどに大きかった。そして心配していたというのはつまり,4人だけでは到底無理だと思っていたからだと思う。私は2009年,京セラドームで行われた「Winter party Diamond」に行ったのだが,その時のNEWS(6人体制)はとても輝いていた。その輝きがどうしても頭から離れていなかった。

会場となった秩父宮ラグビー場はコンサート会場としては幾分小さめだし,全体のセットは割とシンプルですらある。しかしメインステージにはお城のようなセットが組まれ,まさに「美しい恋」の舞台装置を演出する。このコンサートの目玉は何といっても4人体制になって初のシングル『チャンカパーナ』であり,オープニングで歌われる他にエンディングで2度も歌われるのだが,そのほかは今までのNEWSの代表曲である『News ニッポン』や『weeeek』『Happy Birthday』などが次々と歌われていく。ジャニーズのコンサートと言えば,ドームのようなとにかく大規模な会場で,火薬や水を大量に使ってとにかくド派手に演出するという印象があるが,決してそれが全てではない。大事なのは何よりもやはり曲であり,さらにメンバーのライブに賭ける想いである,というのは昨夏KAT-TUNが「come Here」ライブツアーで示した通りであるが,このライブでのNEWSも全く同じことを示したのだと言える。

映像化にあたっては客席の光景がとても効果的に差し込まれている。私は本来,ジャニーズのライブ映像で客席が映るのがあまり好きではない。狂乱する観客はそのまま自分の姿であり,否応なしにそれを直視させられることになるからだ。しかしこのライブで映し出されたファンの顔は,いつ見てもとても美しかった。手に持ったうちわには「待ってたよ」「ありがとう」「NEWSを続けてくれてありがとう」などと温かい言葉が書かれている。うちわをふるのも忘れ,頬に涙を流しながらただステージのNEWSを見つめているファンもいた。とかく失笑されがちなジャニーズファンという存在ではあるが,好きな人を応援し,またステージを見られることを心から信じて待ち,そして再会できたことの喜びが,どんな言葉よりも雄弁に語られていた。これだって立派な「美しい恋」でなくてなんであろう。まるでドキュメンタリー番組を見ているような静かな感動を覚えた。

一番のクライマックスは,何といっても最後の挨拶での,メンバーからの感謝の言葉である。ツアーファイナルなどの回をDVD収録に使い,感極まって思わず涙するメンバーを映す手法は取り立てて珍しいものでもなんでもないが,このライブはその手法の本領発揮とすら言えるように思った。ファンの応援のおかげで『チャンカパーナ』は1位を取ることができたが,こうして直接反応を見るまで安心できなかったと語る手越祐也。「気づけば最後のライブは終わっていたんじゃないかと思った」と語る加藤シゲアキ。「(コンサートで今までのNEWSの曲を歌うに当たって)山下くんと錦戸くんの歌割りを引き継ぐというのはとてもプレッシャーがあった」と語る増田貴久。「これが僕たち4人の答えだし,(ファンの)みなさんが出させてくれた答えだと思っています」と締めくくる小山慶一郎。涙ぐみながら一言一言ゆっくり語る言葉には,同情を乞う思いでもこれからも見捨てないでくれとの懇願でもなく,ただ今までの感謝と,これからも見守ってほしいという素直な思いが込められているように思えた。「メンバーがそれぞれに「山下くんと錦戸くんを敵だとは思っていない」と言ったのも印象的だった。口では何とでも言えるだろう,と冷笑することはもちろんできる。しかし彼らを「NEWSを一緒に作ってきた仲間」だと語り,さらに「(敵ではないけれども)負けるつもりはない」と言っていたことこそが,彼らの本心だと思った。もともと9人もいたグループで,方向性もやりたいことも違ってくるのは,それはある意味で当然というか,少なくともおかしいことではない。脱退は見ようによっては「最悪」の結末である。しかしそれを選んだのならば,それが最善の選択になるように双方が手を抜かない。元メンバーだからといって,容赦しないしされたくもない。それが「負けられない」に込められた意味なのだろうと,私は受け取った。その挨拶の後に4人で円陣を組むようにして気持ちを立て直し,『フルスイング』を歌うのだが,結局何度も詰まりながら涙声で歌う彼らの姿には,否応なしにこちらも目頭が熱くなった。『フルスイング』には「立ち止まっていたとしたってここで終わりじゃなくてそう何度だって賽を振れ」という歌詞がある。私たちのような一般人にしたって,彼らのような芸能人にしたって,わき目も振らず右肩上がりの快進撃を続けられる人間はほんの一握りしかいない。しかし前を向いて猪突猛進に進み続けることだけが素晴らしいのではない。何かにつまづいた時,挫折した時,そこで引き返したり逃げたりするのではなくて,傷を負った自分としっかり向き合い,「何度だって賽を振」ってゆっくりとでも進み続けることのできる人こそが尊いのだ。

「美しい恋にするよ」は『チャンカパーナ』の一節であり,またジャック・ケルアック『路上』にも出てくる印象的な言葉である。*2この『路上』,作品そのものは男のロマン詰め合わせのように感じられて,正直言って私は苦手な部類だったし,『チャンカパーナ』を初めて聴いた時も,キャッチーではあるけれども何やらチャラチャラした曲,くらいにしか思っていなかった。しかしこのコンサートにおいて,紆余曲折を経た彼らの言葉として発せられ,またライブツアーの名前にも冠せられた「美しい恋にするよ」には,むしろプロポーズのような重厚さと決意とが伴っていた。

「美しい恋にするよ」と彼らは言った。新生NEWSにとって,それは決して軽い気持ちで発せられた言葉ではなかったはずだ。「美しい恋にするよ」と名づけられたコンサートは,ファンの心に残る「美しい恋」として幕を閉じた。それから3年,彼らは今年もライブツアーを開催する。彼らとファンとの間の恋は,まだまだ終わる気配がない。

*1:こちらのDVDは,年末年始に帰国した際にNEWSファンのお友達から貸していただきました。まりるさん,本当にありがとうございました!

*2:この2作の相似については,あややさんのこちらの記事をご覧ください。