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『セカンド・ラブ』がいかに素晴らしいかを全力で述べる

今期のドラマの中で私が最も注目しているのが亀梨和也深田恭子主演の『セカンド・ラブ』である。*1脚本はあの大石静先生。割と深い時間から始まる時間枠で,しかも官能的な表現を大胆に押し出しているため,一部では(そして大石静本人からも)「夜メロ」と呼ばれているらしい。私は1話を見て大変気に入り,そして今までに4回繰り返して見た。*2これ以上見る前に,早く第2話を放送してほしい。しかし巷では案の定というか,このドラマに対して「展開が急すぎて不自然」とかいう声も聞かれているようである。

Haha!ナンセンス!

そもそもドラマに対してつけるケチに「展開が急すぎる」だなんて的外れもいいとこなのであるが(それはドラマに対して「ドラマティックすぎる」と言っているようなものである),今日は4回も見た立場から,この『セカンド・ラブ』を全力で擁護してみようと思うのである。

まずは何よりも先に,平慶(亀梨和也)と西原結唯(深田恭子)に起こる「急展開」に関して。慶は人生に絶望している時,偶然結唯を見かけて一目惚れする。熱烈にアプローチされ,「なんで私なのよ」とたじろぐ結唯に,「偶然見かけた結唯さんが,夕日の中で女神のように輝いて見えたから」と言う。そして2人は急接近する。

それってそんなに「ありえない」か?男女の仲ってそういうもんじゃないの?*3

しかしなぜいつも,こういう意見が出るのだろう。ドラマや映画で男女が急接近すると,すぐに「こんなことあるわけがない」といきり立つ方が多い。どうもみなさま,「お友達から」幻想が強いのではないか。多くの人が恋愛において,「自然」な出会い*4と「自然」な発展を望んでいるように思う。私が29年間生きてきた中で数え切れないほど耳にしたこの言説を分析してみると,ここでいう「自然」というのがつまり「お友達から」で,要するに友達・同僚などの(建前として恋愛感情を含まない)フラットな状態で「お互いのことを知っていくうちに」「徐々に」恋愛関係へと発展する,というものである。確かにそれは,ひとさまに聞かれたりしたとき,胸を張って答えることのできる「清く正しく美しい」馴れ初めだろう。*5しかし,それこそが贅沢な幻想であるというのは,白河桃子が『婚活時代』で喝破した通りである。*6しかも,それって本当に多くが望む恋愛なんですか?たとえば私自身は,少ない少ない恋愛経験の中で,一度たりとも「お友達から」なんてことはなかった。好きになる人は最初から「この人(恋愛対象として)いいな」と思っている。一目惚れも十分あり得るから,その人のことを「徐々に」好きになるなんてこともない。そもそもそんな必要がない。だって別に,正当化しなくても好きですもん。*7むしろ一度(狭義の)「お友達」として認識した相手が「恋愛対象ゾーン」に入ってきたことは,少なくとも今のところ,ない。ずっと友達,ずっとずっと友達,大人になっても,ずっとともーだちーイェーイ,である。私はこんな人間であるから,指差し確認するようにその人の美点をひとつひとつ好きになっていく方がよっぽどしたたかなようにも思えてしまう(加点方式?査定?)。ましてこれはドラマだし,まして慶は芸術家という設定だし(芸術家の恋愛なんてたいていぶっ飛んでいる),何より33歳と28歳という,ある程度「大人」の恋愛の話である。まず「徐々に」「お友達になって」「連絡先交換して」メールのやりとりとかするの?大人が?高校生みたいに?そっちの方が不自然じゃないか?

私の(歪んだ)恋愛観を暴露するのはこのあたりでやめておくとして,もうひとつ私がこのドラマの中で一番素晴らしいと感じたのは,ラブシーンの描き方であった。これまでこんなリアリティに満ちたラブシーンがありましたか?ひとつひとつのセリフが,行動が,すべてを象徴している。特に素晴らしかったのは,慶が結唯の服を脱がせようとしたときに結唯が「自分で脱ぐ」と言ったことで,この時の深キョンのセリフの発し方が,表情が,もう途方もなく可愛いという私の個人的な悶絶はさておき,この「自分で脱ぐ」という発言は,結唯が恋愛に不慣れであるということや自分に自信がないというネガティブさの反面,慶よりも大人であり社会的にも自立しており,慶(=男性)にリードされる必要はないというポジティブさをも表していると思われるのである。

また2人がソファーに倒れ込む時,慌てて慶が電気ストーブを点けるその指先が一瞬アップになるのだが,わざわざそういうカットを入れるというのが実にいい。急いた指は何度もボタンを押し損ねる。これからセックスしようというのに,その前に「ストーブを点ける」*8うえ,焦ってボタンを何度も押すなんて間抜けなことこの上ないのだが,そのワンシーンをきちんと切り取るあたりに,ただのファンタジーにはしないという矜持を感じた。亀梨和也をキャスティングするにあたっては,「KAT-TUNのフロント・亀梨和也」のイメージ通り,危険な色気を放つ「俺様」な青年の役を与えるのが一番楽だろう。このドラマにおいてだって,たとえば『きょうは会社休みます。』の福士蒼汰のように,自信に満ちてストレートに思いをぶつけてくる年下の青年という使い方でもよかったはずである。*9しかしこのドラマにおいて,亀梨和也演じる平慶は挫折のただ中で絶望し苦悩している青年であり,それがこのラブシーンの中で非常によく活かされていると思うのである。ひとりの若い青年として,またスランプに苦しむ天才コンテンポラリーダンサーとして,偶然見つけたミューズをどうしても逃がすまいと「がんばって」いる。それがなんとも人間味があって微笑ましい。これはうまくいけば,亀梨和也の芸幅をもっともっと広げるチャンスにもなるだろう。ちなみに慶がこうして頑張って点けたストーブは,灯りの落とされた部屋に暖かいオレンジの光を投げかけ,大変に美しい。

そういうわけで,全体的に金曜深夜の恍惚にふさわしい素晴らしい作品だと思うのだが,私にだって「そんなことあるか!」と叫びたくなるポイントは主に2点ある。まず,天才コンテンポラリーダンサー*10平慶は,今仕事がないので,漁港で働くなど日雇いの肉体労働に勤しんでいる。ダンスに関してプライドが高く,中途半端なダンスの仕事をするくらいならという設定だそうだが,ダンスに関してプライドが高いダンサーが,いつ怪我してもおかしくないような仕事をするか!もうひとつは結唯に関する設定で,彼女は高校時代にスカウトされて読者モデルをしており,ちやほやされていい気になっていたがそれは若さゆえであって,就活では何十社も落ち,ギリギリで県立高校の教員になれた,ということになっている。県立高校の採用試験の倍率を何倍だと思っている!下手すりゃ20倍とかになるぞ!舐めんな!

と,いいところも悪いところも含めて物申したくなるドラマだし,今のところ賛否両論だが,しかし賛否両論は決して悪いことではない。第1話で慶と結唯はすでに男女の関係になっているが,これからどのように展開させるのか非常に楽しみである。慶には幼なじみ(おそらく慶のことが好き)が,結唯には不倫相手の教師(生瀬勝久)がいて,この2人が障壁になるのであろうし,これがおそらくこのドラマの山場としての役割を果たす試練となるだろうということは容易に想像できる。視聴者として,願わくはこのあたりを不必要にドラマティックに描いたりしないでほしいものだが(だって慶も結唯も独身なのだから,根本的には何の咎めることもないわけなので),まぁそのあたりも含めて期待したいところである。そしてそのうち,『きょうは会社休みます。』とか『姉の結婚*11とか,そういうものと勝手に比較検討したりとかしてみたい。みなさまもぜひ,金曜深夜は『セカンド・ラブ』をご覧ください。ちなみに今回も,テレビ朝日から金品を受け取ったりなどは一切ありません。

*1:なぜ日本のテレビがこちらで見られているかと申しますと,年末年始にブルーレイレコーダーを購入し,それに「リモート視聴」という機能がついているからです。ブルーレイレコーダーをインターネットにつないでおき,タブレットとペアリングしておけば,著作権の関係から3ヶ月限定という制限はあるものの,タブレットを持ち運んだ先で録画した番組や放送中の番組が見られるという機能。ああ,テクノロジー。この件については稿を改めます。

*2:化粧するときなど,恋愛ものの映画やドラマを流しておくのはいいですよ。モチベーションが上がって。

*3:念のために申しますと,私の恋愛がそうだというわけではないですよ。私の恋愛経験も内容もそれはそれは貧弱なものです。まぁ,以下に少し書きますけども。

*4:ここで言う「自然」とは,「合コンなど恣意的な出会い方ではなく偶然的(たとえば会社の同僚など)に」という場合であることが多い。

*5:誰も結婚式で「2人の出会いは合コン」とか「新郎と新婦は結婚相談所で出会い」とか「新郎が新婦をナンパして」とかそんなことを言いたくはない。

*6:この本,すべてに賛同はできなかったけれど(むしろ賛同できなかったところの方が多かったけれど),この点に関してだけは大いに賛同する。

*7:いや,まぁ,だから失敗することも多いんですけども……。

*8:しかも「電気ストーブ」というところがちょっと貧しくていいのだ。素敵なマンションにお住まいだったらこんなことしなくても暖かいですから。

*9:きょうは会社休みます。』はすこぶる好評だったようだが,私は個人的に全然好きになれなかった。それこそ「そんなわけないだろう」の連続だったし(私にとって),何よりも私は自信に満ちた男性というのが苦手なんだと思う。

*10:しかもその実力はローザンヌ国際バレエコンクールで優勝するほどである。

*11:これは批判の声も多いが,私は個人的にとても好きで,実家に全巻所蔵している。しかしこれを読んでいると腫れ物に触るような目を向けられる。