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ボルドーでカミュを

来月先輩を訪ねてボルドーに旅行するので,付け焼刃でフランス語の復習をしている。フランス語なんて普段全く使わないので,びっくりするほど基礎的な文法や語彙を忘れていて自己嫌悪の毎日である。

LA Peste (Folio Series: No. 42)

LA Peste (Folio Series: No. 42)

 

 去年パリに行ったときに買ってきたカミュの『ペスト』,買ったときはこれを毎日少しずつ読んでフランス語の勉強をしようと思っていたのである。で,まぁ,読むわけがありませんよね。結果,私の本棚を知的かつファッショナブルに彩るインテリアとして立派に働いてくれている。*1しかし今こそ,この『ペスト』に本来の働きをしてもらう時ではなかろうか。とはいえ先述した通り,私は基礎的な事項を忘れている身。いきなりカミュなどおこがましいことこの上ないのだが,何であれフランス語に触れることは大事なことである。

Les curieux événements qui font le sujet de cette chronique se sont produits en 194., à Oran.

うわぁ!『ペスト』!

……私にとって,実はこれこそが名作を原語で読むことの罠である。有名すぎる冒頭を原語で読むだけで胸が高鳴り,そこから先へ進まないのだ(私は今とても幸せである)。これまで『予告された殺人の記録』やら『太平洋の防波堤』が先に進まなかったのもすべて,このせいだ。そもそも,どれもこれも語学学習のための読書にはきわめて向いていない選書であるというのはさておき。

あともうひとつの罠は,そうですね,「この物語の主題である奇妙な出来事は194X年にオランで起こった」とか,ふつう,日常会話で言わないということですね。それを言ったらおしまいなのだが。2年前ドイツに旅行するときも,ドイツ語の勉強をしようと思ってミュージカル『エリザベート』のウィーンキャスト版ばかり聞いていたのだが,<<Entweder sie oder ich>>(「彼女か私かどちらか(を選んで)」)なんて言葉を発する瞬間が数日間の旅行の中で訪れるとしたら,そりゃもう,大事件である。

そういうわけで,本当に語学を真面目に上達させたいのだとしたら,おとなしく文法などの復習をして,なおかつLe mondeのオンライン版とかを読むのが一番なのだろうが,んー,だって面白くないんですもん。そういうわけで試行錯誤している。

ベルヴィル・ランデブー [DVD]

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 こちらの『ベルヴィル・ランデブー』もフランス語の勉強になるかと思って以前見たのだが,シルヴァン・ショメって全くと言っていいほどセリフを使わない。セリフが少ないということは知っていたけれども,ほぼ無音映画じゃないですか。


Belleville- Rendez Vous - YouTube

唯一といっていいほどフランス語が聴けるのはこの主題歌なのだが,この主題歌がまたコンスタンティノープルで死ぬのは嫌だね 韻を踏みにくい地名だから」とかカトマンズになら住んでもいい 韻を踏みやすい地名だから」とかトンチキなことこの上ない。カミュ以上に日常生活で言わないこと請け合いである。でも,『ベルヴィル・ランデブー』は本当に素敵なので,フランス語を勉強しようなどという邪心を抱かずただ純粋に見てほしい映画です。本編もこの主題歌に負けず劣らず9割方トンチキなのだが,最後に登場人物がひとことだけセリフを発する。それで泣きました。やられた。

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 これもまったく同じ手口でやられた。こちらもぜひ。

*1:ちなみにこの「インテリアとして第2の人生を歩み始めた」洋書にはほかに,ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』スペイン語版があります。マルグリット・デュラス『太平洋の防波堤』もあったのだが,こちらは日本に持って帰ってしまった。