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男だらけのシェイクスピア読書会

学校の文書館に見たい史料があったので,今日はそこに行ってきた。

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 文書館へはこの有名な旧図書館を通り抜けていくので,観光客でごった返す中,「アーカイブに行きますので」と言いながら立ち入り禁止区域へと入っていける特権意識を味わえる。

今日見たのは,19世紀にうちの大学で開かれていたCaliban Clubというクラブの議事録である。読書会の議事録がないかと調べていて,このクラブを見つけたのだった。Caliban Clubなんて言うくらいなのだから,シェイクスピア読書会に違いないのである。*1名前だけを見て見せてほしいと頼んだが,果たしてその通り,シェイクスピア読書会であった。

で,確かに彼らはシェイクスピアを読んでいた。読んでいたのだが,議事録に記されている議題が,もうくだらないことこの上ない。たとえばこれ,

キャリバン・クラブのメンバーには,読書会の後で飲みたければ,スタウトとビールが支給されることが決定された。ただし,煙草は支給されない。

 なんだこれ,と思ったのだが,この後もこの「ビール飲んでいいか」「煙草はダメなのか」論争はしばらく続くのである。

D・M・ウィルソン氏はキャリバン・クラブから (1) 読書会の最中に新聞を読んでいたこと (2) 読書会の最中に喫煙していたこと に関して叱責を受けた。<中略>「読書会中の喫煙は容認してはどうか」とウェブスター氏が提案し,ベイカー氏が賛成した。これは8対2で否決された。

 いや,まずウィルソン除籍しましょうよ。

ウェブスターも同情するなよ。ベイカーも賛成してんじゃないよ。というか8対2って,賛成してるのウェブスターとベイカーだけじゃないですか。

 これらの記述はおそらく,論文を書く上で何の役にも立たないと思われる。男だらけで読書会するとこのザマです,という例にはなるかもしれないが,たぶんなんら議論を補強することはない。しかし歴史をやっていて楽しいのは何より,史料調査中にこういうくだらない一部を見つけた時の面白さだったりする。そういうわけで,「獲れ高」はそこまでよくはなかったが,まあまあ楽しい史料調査であった。

もうひとつ気になるのは,前述した通り男だらけのシェイクスピア読書会であるわけで,活動の主な内容は戯曲を役割分担して読み上げることなのである。となると,当然女の役も男が演じるわけで,そうなるとやっぱり,声色変えたりしたのだろうか。いや,シェイクスピア演劇ってもともとは男だらけで演じられていたのだから,そんなに驚くことでもないのだが,上演するわけではないとはいえ,読み上げるならそれなりに役に入らなければなるまい。マクベス夫人が鬼気迫ってマクベスにダンカンを殺せと迫るところとか,彼らの「悪女」感が反映されるように思うのだが。もしくは『オセロ―』のデズデモーナ,これを男がやるのはあまり見たくない。演者の理想が反映されてしまう。「あいつのレディ・マクベス,あいつの元カノっぽくね?ていうかあいつ泣いてね?」とか,「あいつのデズデモーナ,どう考えても○○ちゃんが反映されててマジでウケる」とか,そういう事例が続出したりしなかったのだろうか。一番難しいと思われるのは『ヴェニスの商人』のポーシャで,彼女は劇中で男装して裁判官を装うのだが,これを男がやるとすると,男装した女を演じる男というわけで,何重にもねじれている。ちょっと,ビールだの煙草だのどうでもいいから,誰の演技がよかったとか,そういうの書いてよ!

*1:キャリバン,というのは『テンペスト』に出てくる怪物の名前。