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『1812年』にFH-70はちょっと

いろいろと盛りだくさんだった1日*1のあと,こちらに戻ってきてから初めてとなるRTÉオーケストラを聴きに行った。

本日のプログラムはオール・チャイコフスキー

  1. イタリア奇想曲
  2. 『エフゲニー・オネーギン』より,ポロネーズ
  3. 『エフゲニー・オネーギン』より,ワルツ
  4. 『エフゲニー・オネーギン』より,手紙の場面
  5. 白鳥の湖組曲
  6. 歌劇『イオランタ』より,イオランタのアリオーソ
  7. 1812年

という構成で,うーん,なんか,小曲が必要以上に組み込まれている感がしなくもない。特に6番目の『イオランタ』は,25分の『白鳥』と15分の『1812年』の間に無理やり入れる必要があるだろうか,という感じもしないでもなかった。

この中で楽しみにしていたのはやっぱり『1812年』。大砲が用いられることで有名なこの曲,もちろん普段のオケの公演で大砲は使えないので,たいていの場合は大太鼓が代用される。さあ,今回はどうするのかな,と楽しみにしていたのだが,いつものクワイア・バルコニーに行こうとして2階席に上がったら,

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お前か。バルコニーに思いっきり設置してあった。

クワイア・バルコニーというのはいろいろな発見があり,全員が持ち場に着いたのち,コントラバス奏者の女性が隣のコントラバス奏者に「これ持ってて」と頼んだかと思えば慌てて袖に走っていき,弓を持って戻ってきたり(えっ,弓忘れたの?),始まる直前まで譜面台にスマホを置いている金管奏者がいたりする。期待していた『1812年』は,もうなんか,金曜日の夜にナポレオン軍を大砲で撃退するなんて,こんなカタルシスがあろうかと思われるほど楽しかった。クワイア・バルコニーなので,どちらかというと『ラ・マルセイエーズ』を奏でる金管に近く,もしかしてフランス軍側なのかもしれないが。

さらに幕間にホワイエに出てみると,ちょうど白ワインを買っている指導教官とばったり会うという偶然もあった。指導教官は今日は奥様とではなくてお友達2人といらしていた。紹介されるとき,きちんと「先生から逃げていたのにこんなところで捕まるなんて」とジョークを言っておいたし,何か楽器やるんだっけ,と聞かれたので,はいピアノを嗜む程度に,最近ではショパンスカルラッティを練習しておりますの,と答えておいたので,自分で言うのも何だが,もう100点でしょうこれは。ハイソな場所で偶然会い,さらにナイスアシストな質問をしてくれたことに感動を禁じ得ない。しかもこの「スカルラッティ」(英語では「スカーラティ」に近い発音)の通っぽさ。これがショパンだけだったらこうはいかなかった。以上,自画自賛でした。

さて,帰ってみると,やはり実際の大砲を用いた軍楽隊の演奏が聴いてみたくなり,Youtubeでいろいろ調べてみた。ミリオタのみなさまによって,動画がこれでもかと投稿されている。ありがたいことである。

一番多いのは陸自の演習の際のものだったが,まず迷彩服だと雰囲気が出ない。あと,FH-70はハイスペックというか,大掛かりすぎるナポレオン戦争のことを書いた曲なのだし,曲が書かれたの自体も19世紀後半とかなのだから,せめて第一次大戦よりは前の,しかも野砲レベルの大きさにしてくれないと。*2しかもここまでの新型大砲になると,どちらかというと大砲の操作とか砲弾の装填,さらにそれに付随する隊員の所作が見どころになってしまって(ミリオタによる撮影なのだから仕方ないのだが),多少本末転倒なところがある。しかもいちいち発射の前に「離れてください!」という声が入るのがいただけない。これが米軍になると,もう操作のたびに"Halt!"とか入ってもううるさいことこの上ない。さらにHMS Belfastを用いた戦艦の大砲のものも見てみたが,まず,せめて陸軍でやってくれよ。海戦じゃないんだし。

そういうわけで,厳選の末,私がおすすめする演奏はこちらです。レニングラード交響楽団による演奏。ホールの外に大砲(しかも野砲レベル)を並べるスタイルのもの。Woohoo!


Tchaikovsky - 1812 Overture - Leningrad Phil ...

ちなみに,また高校地歴教員免許保持者として付け加えると,この曲を聴く上では,フランス革命やその帰結としてもたらされた共和制が,どれほど(ロシア帝国をも含む)ヨーロッパに恐怖を与え,それに対して勝利するということがどれほど誇らしいことだったのかということをぜひ深くご理解いただきたい。フランス革命は必ずしも必然ではないし,ナポレオンは絶対的なヒーローというわけでもないのです。

*1:今日はアイルランド語会話会に復帰したり,日本語の個人レッスンを始めたり,いろいろありましたがそれはまた後日。

*2:血眼で大砲の歴史を調べたところによると,ロシア帝国軍によって用いられたM1877 87mm軽野砲というのがよさそうである。え,私?ミリオタっ気あります。ライフルとか撃ってたくらいですし。