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Expertises are a girl's best friend

今週のお題が「いま学んでみたいこと」ということで,ちょうど留学後に取りたい資格のことを最近考えていたことでもあるし,ちょっと書いてみる。

まずは司書資格。何度も書いたように私の専門のひとつに図書館史があって,それが高じて最近では現代の図書館にまで興味を持っている。タイミングもよかったと見えて,昨今の日本においては,武雄市図書館の例のように,公立図書館が(必ずしもよいことばかりではないにせよ)注目を集めることが多い。図書館史的な観点から見ても,今はちょうど過渡期であるようだ。仮にも図書館史の専門家として,それを目撃できるほど幸運なことはない。しかしそうなると,やはり「19世紀後半から20世紀前半のイギリス・アイルランドの図書館のことしか知らない」ではなかなか情けない。それに,私は今後も図書館の現状について発言していく気満々なのである。「今のことについては素人のくせに」と言われて何も言えなくなる状況は避けたい。

そういうわけで,留学が終わって帰国したら,仕事を始めるまでの間に司書資格を取りたいと思っている。というか,これは大学で取っておけばよかったのだが,まさか自分が図書館史を始めるなんて日本にいる間は思ってもおらず,今考えると痛恨の極みである。今回地元で図書館のワークショップに参加したことによって司書さん*1とも知り合いになれたし,またいろいろ伺おうと思っている。

それからもう1つは介護職員初任者研修(いわゆるホームヘルパー)。これは前から思っていたことではあるのだが,ホームヘルパーの資格って,今後持っておいて絶対に損はないのではないかと思う。私の祖母は父方も母方も健在だがどちらも足が悪く,ホームヘルパーを頼んでいる。しかしやはり人材不足であるらしく,少なくとも母方の祖母に関しては,週に2回が限度だとのことだった。契約だかの関係で,ほかの派遣所から頼むこともできないらしい。だとしたら合理的に考えて,家族の誰かに専門的な知識があればいいのではないか,と考えたのが発端だった。

思い立ったらすぐに調べてみるタイプなので,通信講座を中心に比較検討してみたのだが,受講料はだいたい5万~8万くらいといったところで,場合によっては自治体の助成が受けられたりする。激安なわけでもないが高すぎるわけでもない。しかも最短で1ヶ月くらいあれば取得可能とのことだった。これまで日本に帰国している間,無為に過ごすくらいならやっておけばよかった。あと,これは知らなかったのだが,ホームヘルパーって最近「介護職員初任者研修」に名前が変わったのですね。学ぶ内容も,前は施設実習付きの講座を受ければ無試験で資格取得ができていたのが,今は施設実習はないけれども試験が必要(という理解で大丈夫でしょうか)とか。へええ。世の中には知らないことがたくさんあるものだ。

しかし,考えれば考えるほど,介護に関する専門知識はあったほうが楽なことがたくさんあると思う。現実的に考えて,特に女であればきっと(こういうことを言うとそれこそ「ダメフェミ」なのだが),今後介護とずっと無縁ではいられない。今は祖父母だが,それから数十年もすれば両親の問題として直面することになるのだろうし,結婚していたら義両親の介護もする必要があったりするかもしれない。そういう時,見よう見まねで格闘するよりも,専門的な知識があればずいぶん助けになるだろう(し,何より精神的な負担がだいぶ違うだろう)と思う。余談だが,ホームヘルパーの勉強をしようか考えているなどと言うと,たいてい「孝行な娘/孫」と褒められる。だけど,私は現実的に合理的に考えているだけであって,特に「良いこと」をしようと思ってそうしている自覚はない。

たぶんこうしてみると,大学で研究をしているのもあって,専門的かつ体系的な知識というものに対して私は全幅の信頼を置いているのだろうと思う。でも,30年近く生きてきて,知識と芸は裏切らなかった。これからもきっとそうだろう。「アイルランドの図書館史のことなんて知らなければこんなことには……」などという状況は想像できない。

ところで上に私が述べた「司書」と「ホームヘルパー」,これらはどちらも,女性が社会進出を始める時代(19世紀末)において象徴的だった仕事である。さすがに19世紀末の時点でヘルパーの仕事はないので,医者や看護師など,いわゆる"caring roles"(「世話をする仕事」)と総称されるような仕事。私は一応ジェンダー史家でもあるから,こうした仕事の一端を見ることが,きっと自分の研究にも役立つと思っている。というわけで,前向きに検討している。

In Search of the New Woman: Middle-Class Women and Work in Britain 1870?1914

In Search of the New Woman: Middle-Class Women and Work in Britain 1870?1914

 

 上に書いたような,女性の社会進出と職業イメージの関係を分析した研究書。文献紹介をイギリス女性史研究会の会誌である『女性とジェンダーの歴史』第3号に載せていただけることになりました。先日入稿済みで,11月に刊行予定だそう。職業選択の際に女性が「淑女(lady)」と「女性(woman)」,「淑女らしさ」と「リスペクタビリティ」のどちらを志向したかという点に焦点が当てられたこの本,いい本だとは思うのだが,書き方がえらいヘタクソ(申し訳ありません)に感じられて,そんなに分厚い本でもないのに読むのにえらく時間がかかりました。

*1:お2人いらっしゃるのだが,どちらも年が近くてうれしい。1人は同い年だった。