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A room of women's own

昨日の日記に,図書館史をやっている関係で現代の図書館事情も面白くて仕方ないと書いたのだが,それはジェンダー史の面でも同じである。この研究を始めてからというもの,結婚した友達や出産した友達の話が興味深くて仕方ない。帰国するたびに話を聞くのだが,さすがに書きとめまではしないものの(もう書きとめさせてもらってもよいのではないかと思う),いろんな話が印象に残っている。ちなみに私の中のお気に入りは,「夫が家事をするわけでもないくせに家電を買うとなるとやたら口を出してきて,しかもダイソンを買いたがる」というものと,「夫は褒めて育てろというけれども,夫が多少家事や育児を手伝ったくらいでなぜそんなに感謝しなければならないのか」というものである。どちらも非常に味わい深い。前者は男性と女性の視点の違いを表すものとして興味深い*1し,後者には,はっ,確かに,と気づかされた。*2

しかしこうした話題は,多くの場合,女性だけの間で共有される。それは友人同士だったり,女性雑誌の読者ページであったり,今では女性用のコミュニティサイトであったりいろいろである。さらにコミュニティサイトの活動は多くの場合,同窓組織がベースになっている。*3こうした現象はそのまま19世紀末の,名門女子校の部活動がそのまま卒業後においてもソーシャル・ネットワーキングの場として機能する例や,また女性の慈善活動団体が多くの場合において,宗教と出身校を同じくする女性によって組織されていたということを想起させるものとして見ることができると同時に,女性の交流や意見の交換が多くの場合において「閉じた(exclusive)」ものであった/あるということを示すのではないかと思う。女性の話題は女性だけのものへ,さらにママの話題はママだけのものへ,もっと言えば「○○大学を卒業したママ」だけのものへと,共有資格がどんどん狭くなっていく。私は一応(将来的にでも)入会資格を持つ身ではあるが,その私から見てもずいぶん閉鎖的に思える。

これにはもちろん利点もある。たとえば妊娠だったり出産だったり,その他もろもろの男性の前では話しづらいことを気兼ねなく話し合える*4という点もそうだし,またカジュアルな共感が得られることによって,一時的にではあってもストレスが解消されるという点もそうだろう。しかしその一方で,男性の家事や育児への参加というような,もはや永遠の課題とも言えるような問題を根本的な解決に導くために,それが果たして最善の方法なのだろうかとも思う。家事や育児にものすごく積極的な男性がまだまだわずかなのだったら,「イクメン」とか言ってブーム化しておだてるのもまあ一つの策かとは思うが,その前に,こうした話題が女性のみによって共有されるのではなく,きちんと男女によって話し合われる場所がもっと設けられるべきなのではないか。または,話し合うとまではいかなくても,とにかく何が問題なのかを可視化して,男性の「見える場所に置いておく」ということがなされなければいけないのではないか。

ということを,今日ぼんやり女性専用のコミュニティサイトなど見ながら思った。私は女だから,こういう話題は共有してもらえるし,自分の将来のこととして興味も持つし,もちろんコミュニティサイトを見ることもできる。しかし多くの男性にとって,やはりまだまだ家事や育児などは「閉ざされた話題」なのではないか。こうした話題がもっと開かれていけば,わずかずつであっても改善されていく部分もあるのではないか。

ただし,こうしたことを偉そうに語るには,現代の図書館の例と同じく,私は部外者でありすぎるのである。私は未婚で,もちろん妊娠も出産もしたことがない。何言ってんだこの素人が,とのお叱りを受けるのは重々承知の上で,考えたことだけこちらに書いておく次第である。

*1:ダイソン,ハイスペックだが,たいていの場合大きいし重いし,おまけにかなり音がうるさかったりするので,女性には不評な場合が多い気がする。私も実家のダイソンの掃除機があまり好きではない。

*2:たとえば「イクメン」という言葉への批判などにも見られる通り,本来の意味で夫婦が対等な立場に立つのであれば,家事も育児も,夫が協力するのは何も特別なことではなく,当たり前であるはず。確かに今の風潮は,とかく夫が何かしてくれたら大げさに感謝しろというのが主流で,それはもちろん夫を「おだてて」動かせるための方策ではあるのだが,健全かどうかと考えるとまた別かもしれない。

*3:たとえば東大の例でいえば,女性研究者コミュニティのFREUTや,東大ママ門がある。

*4:たとえば「1人目を出産した後なかなか生理が来なくて,もしかして2人目不妊になるのではと心配だ」なんて,そうそう簡単に男性(しかも他人)に話せることではないでしょう。