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アールグレイが飲みたい

思いもよらなかったところで思いもよらない香りを感じることが最近たまにある。たとえばこの前,ベッドに寝転んだ瞬間,しばらくつけていないはずのアナスイのボディローションの香りがした。しばらくつけていないあまり,何の香りなのかとっさには思い出せず,しばらくふんふん嗅いでいたくらいだ。これは,なんだっけ,なんなんだっけ,しかし絶対私がつけていた香りだ,という感覚はずいぶん不思議なものだった。あっ,あれだ,とわかってからも,なぜベッドからその香りがするのか(正確に言えばベッドからではなく,ベッドの「あたり」で香っていた)はまったくわからない。もちろん女を,しかも同じボディローションを使う女を連れ込んだ覚えもない。でもその時の私にとってそんなことはどうでもよく,おもむろに立ち上がってそのボディローションを両手首のあたりにちょっとつけて,その香りを嗅ぎながら幸せな眠りについた。

また別の日,学校に着いたらそこらあたりにアールグレイの香りが漂っていた。私が普段通っている建物の入り口スペースは割と広くて,しかも階下と吹き抜けのようになっているので,そこらあたりに香りを漂わせようと思ったらトンのレベルでアールグレイをぶちまけなければ不可能なはずである。学会とか研究会のコーヒーブレイクの残り香かとも思ったが,普通コーヒーブレイクで供される紅茶はダージリンで,アールグレイではない(たぶん,好き嫌いがあるから)。そして上にも書いたが,思いもよらぬところから思いもよらぬ香りがする状況に遭遇したとき,なぜか私は「なぜ」その香りがするのかということにあまり興味がない。そのときも,ああアールグレイをしばらく飲んでないなあ,飲みたいなあ,と思っただけだった。そしてその日はすぐにそのことを忘れて,もちろんアールグレイを買うのも忘れて帰ったのだが,さっきふとそのアールグレイの香りを思い出した。探してみたけれど,もちろん都合よくアールグレイの買い置きがあるわけはなかった。ああ,鼻先をくすぐるベルガモットの香り。明日は絶対買って帰ろう。

マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』で,主人公が紅茶にマドレーヌを浸して食べた瞬間に,あっこれどっかで食べたやつ,これなんだっけ,あっ小さいときにコンブレーの叔母さんの家で食べてたやつ,と思い出す有名すぎるシーン,もちろんものすごく好きです。あんなに長い小説なのに,こんなシーンが一番心に残るなんて,それこそがこの小説のすごいところなのではと思う。谷崎潤一郎細雪』にも似たものを感じる。ちなみに,こうした読書によって感性を豊かにした結果,私は先日ダブリンのパブでクラフトビールを飲み,「あっ,これなんかの味に似てる!なんかの味に似てる!わかった!めんつゆだ!しょうがの味もするし!」と騒いだ。

おまけ

インテリアのことを考えてはや3日になる。そもそもどんなイメージの部屋がいいのだろうと思い,具体的に言語化してみようと考えてみた。私は19世紀末がもう好きで好きで仕方ない人間である。ヨーロッパの19世紀末と言えば,そう,デカダンです。というわけで「退廃的」「耽美的」が思いついたのだが,ひとまず「退廃的 部屋」で検索してみた。ヒットしたまとめ記事が最初にすすめてきたのがこれ。

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ええと,違うんだ。富士急ハイランド「戦慄迷宮」に住みたいわけではないんだ。おそろしい。そもそもなぜ私は「退廃的 部屋」なんかで検索したんだ。