読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

在ダブリン日本人PhDたち

ご近所のカフェが今日までクリスマス限定価格でディナーセットを出していたので,私と同居人と先輩の在ダブリン日本人PhD3人で出かけてきた。

たとえばアイルランド文化復興期の文人クラブ「ライマーズ・クラブ」然り,またロンドンのブルームズベリー・グループ然り,さらにはニューヨークのビートニク作家たち然り,同時期に文人や知識人が,それも地理的な一か所に集って,時には活発に議論し,だらだらつるみ,あるいはドロドロの恋愛関係になったりしながら,互いの創作や執筆にインスピレーションを与えあった例は数多い。私たち3人をこれらのグループに準えるのはおこがましいことこの上ないが,それでも日本にいたときから同じゼミを受講し,同じ読書会に参加し,同じ時期に留学して,しまいには3人とも近所に(私と同居人にいたっては同じ家に)住んでいる私たちは,注連縄よりも太いご縁でつながっている。しかも私以外の2人はジェームズ・ジョイスを専門としているから,3人とも専門に扱っている時期はほぼ同じであり,私も2人と会話することによっていくつもインスピレーションを得てきた。改まって集まることがなくても,なんとなくこうして一緒にご飯を食べに行ったり,あるいはたまたま家に来てお茶を飲みながら話をしたりできる物理的な距離の近さは,少なくとも私にとって,とても支えになっている。ちなみに,私たちが住んでいるエリアは,これまた19世紀後半,ジェームズ・ジョイスをはじめとする文人や知識人たちが密集していたエリアであり,当時に想いを馳せると血湧き肉踊るものがある。

昨日は研究の本場にいて,こちらの専門家と「同僚」の立場でカジュアルに議論できることの幸せを噛みしめたけれども,同時に,立場の同じ日本人留学生がこんなに近くにいるというのもまた,私にとっては大変幸運なことであった。こと文系の場合,大学院に入って以降の研究は孤独な営みであることが多い。しかし私は幸いにして,孤独と感じたことは一度もない。それは本当に,周りの人々に感謝するほかはない。博論の謝辞,100ページくらいにわたっても大丈夫だろうか(大丈夫じゃない)。

しかし気がつけば今年ももう12月で,人間関係に恵まれた博士課程もあと10ヶ月弱で終わる。死がわれらを分かつまで仲良くしていただけるよう伏してお願いするとともに,ブルームズベリー・グループよろしく,肉体関係を伴うドロドロには陥らないよう十分注意したいものである。幸か不幸か今のところ,その心配はなさそうです。