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「博士終わったらどうするの」

この前,人生初めての公募に応募してみたのだが,それが終わったら今度は学振の応募シーズンである。そのあとも公募には応募してみようと思っているし,高校の講師登録もしようと思っているから,博論の最終仕上げと並行でこれらのことをこなすとなると,いろいろ忙しい。まあ,30になるまで就活などしたこともない人間だし,一般企業の就活よりはよほどマシである。

しかしこちらで驚くのは,友達とこういう進路の話をしようとしても,話にならないことが多いということである。話にならないというか,予想をはるか超えた答えが返ってくることが多くて,呆気にとられることが多い。「博士終わったらどうするの」と,向こうから聞いてくることの方が多い割に,である。こちらの事情を知りたいから,ポスドクとか応募するの?と聞いても,いやしない,と言われることもたびたびである。彼らには彼らの予定があるのだろうと思って深く追及はしていないが,たぶん博士が終わったら,とりあえず何もせずゆっくりしたい,くらいに思っているんじゃないかと思う。カナダ人のアレックスに,博士終わったらカナダに帰るの?と聞いたら,すぐには帰らないかな,いつかは帰ると思うけど,2年後かもしれないし20年後かもしれないし,まあアカデミアに残るかどうかも決めてないしねー,くらいの答えであった。またスティーブンという私の1歳下の男の子は,博士が終わったらちょっとフランスにでも行こうかな,まあ自由にできる最後のチャンスだろうしね,などと言っていた。大学院に行ったりして人より長い学生生活を送っているのだから,すべての課程が終わったら一刻も早く就職しなければ,などという考えはこちらの友人らにはまったくないらしい。アレックスのように,博士を出たからと言って絶対に研究者になろうとも思っていない,という人も多い。私自身は早く働きたいし,研究者になるために博士課程まで進学しているようなものなので,彼らを特に羨ましいとは思わないのだが,嫌味でもなんでもなく,自由でいいなあとは思う。いいことなのかどうかは別として,これくらいの余裕が日本でも認められれば,みんなもっと気楽に大学院に進学しようと思ったりするかもしれない。

またポスドクに応募する人たちは,当たり前に海外を視野に入れているし,私もそうだと思われている節がある。日本のポスドク学振のこと)に応募しようと思っていると言ったら,いいね!イギリスとかアメリカもいいと思うよ!などと,屈託なく言ってくる。全欧州,時には北アメリカも視野に入れて就活をするのはこちらの学生にとっては当たり前のことなのだが,当たり前のように留学が終わったら日本で働き日本で生活して日本で死ぬのだと思っていた私には,とても視野が広くてまぶしく思える。そうあるべきなんだろうな,とは思うのだが。

まあでもいずれにせよ,こちらから主体的に選ぶなどということはまだまだできない身の上なので,とりあえずいろいろ出してみて,最終的に採用していただいたところにお世話になることになるだろう。などと書くとずいぶん消極的なようではあるのだが,私自身はそこまで悲観してもいない。むしろ,1年後,いや半年後の自分が想像できないというのは,なかなかわくわくするものである。あら,そう考えてみると案外,私もこちらの友人たちの考えに近くなってきたような気がする。でも「博士終わったらどうするの」という質問に対して,とりあえずは日本に帰るということしか決まっていない私も,もしかしたら立派に同類なのかもしれない。それならそれでいい。どういう未来があるにせよ,変化を楽しむことができれば何よりだ,とは思っている。