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私はカウンセラーでもセラピストでもない

昔から,なぜかいきなり,周りの人から秘めたる告解を受けたり,あるいは心情を吐露されたりすることがある。よくある。それはもう,彼氏がいるのにほかの男とキスしてしまっただの寝てしまっただのという女友達からの他愛もない(?)懺悔から,僕には昔からコンプレックスがあるんだとかいう,同級生からの独白までさまざまである。

もちろん,頼りにしてもらえるのはうれしいし,光栄なことである。しかしその反面,いつも話を聞いたあとで複雑な思いが去来するのにも,私はうすうす気づいていた。その思いとは,端的に言えば「知らんがな」である。それ,私に言ってどうなるの,という話である。これまたもちろん,彼らが根本的な解決を求めていないのはわかっている。私が話を聞くだけで,彼らにとっては救いになりうるのだということもよくわかっている。実際,彼らは私に話した後,喜んでいる風ではある。あなたに話を聞いてもらえてよかったと,たいていの人が言う。しかし,なぜその相手に,カウンセラーでもセラピストでもなんでもない私を選ぶのか。彼らがすっきりしているのとは対照的に,私のもやもやは募る一方であった。そして,こんな自分は器が小さいのだろうかとも思っていた。という思いを言語化することもできず数年来抱え続けていたのだが,以前にくたびれはてこさんが書かれたこちらの記事を拝読したとき,ああこういうことだったのかと思った。

kutabirehateko.hateblo.jp

私はたぶん,怒ってよかったのだと思う。怒らなくても,もっと面倒くさそうに聞くくらいの権利はあったのだと思う。話が話だけに,きちんと反応しなければ,きちんとコメントしなければと思うあまりに,無意識に傾聴して,無意識に疲れていた。でもそれ,たぶん当然のことだったのだ。だって考えてみれば当然だが,人に内面を吐露するというのは,人にその重みを半分,もしくは全部,背負わせることだ。重みを分けた彼らは,そりゃすっきりするわけだ。しかし私はただただ余計なものを背負い込むことになっていたわけだから,そりゃもやもやするわけである。

しかも,「ちょっと話したいことがある」などと前置きされて話されるならまだいい。*1私の場合,時に相手から話の流れでいきなり吐露されたりすることがある。いや,話の流れならまだいい。唐突にそんな話題が持ち出されることがある。思い詰めるあまりについ出てしまったんだな,と好意的にとらえることはもちろん可能である。しかしこちらの立場からしてみれば,何の心の準備もない状態でいきなり,「これ,僕/私の恥部です!」と,バーンと目の前に開陳されたようなもので,そんなのもはや,露出狂に等しい。キャッ,と目を覆えるならまだしも,まじまじと見てしまってから後でげっそり後悔することになりかねない。その場合の方が多い。いきなり殴られて「何すんだよ」と殴り返せる人は稀で,たいていの人は呆然とするだろう。そして自分に落ち度があったのではないかと考え始めるだろう。要するにそういうことである。そのうえ,抱え込んでいたものを人に垂れ流してすっきりするのだから,それはもう,はっきり言って排泄と同じではないか。私はカウンセラーでもセラピストでもない,ただのトイレか。

これ,私も30近くになってようやく気づいたようなことなのだから,根本的に難しいことなのだとは思うが,話しにくいことを人に話すというのはそれなりに業の深いことなのだ,ということは意識しておかないといけないだろう。はてこさんも書かれている通り,そういうことを下手にやってしまったら,それは他人の境界を侵害することになりかねない。内面を吐露するというのは,もちろん恥ずかしいことであるとの認識はあるだろうが,それでも敢えてそれをやれば,逆に勇気ある行動だとすら誤解されかねない。しかしそれはその実,ただの自己満足であることの方が多い。それでも話したいなら,相手にも重みを背負わせることになってしまうということを意識した上で,もちろんきちんと前置きして話さなければならないだろう。そして自分が話される側になった場合は,少しでも不快だと感じたらそれを断固としてシャットアウトすることが必要なのだろうと思う。非情なようにも思えるが,それがたぶん,自分を大切にするということなのだ。

なぜ急にこんなことを書いたかというと,最近もまた,こんなことがあったからである。しかも,前置きもなく吐露してくる感じで。別に,内容がセクハラ的であったとか,そんなことはない。ただ私はそれを「気色悪い」と感じたし,しばらく時間をおいてもなお「気色悪い」とあらためて思ったので,そっとシャットアウトしておいた。

*1:かといって,はてこさんの記事に出てくる男子学生を擁護するわけではない。彼のやったことは相手の女の子の気持ちを蹂躙しすぎだと私も思う。